出版社内容情報
本巻は、インドにおける中観思想の成立と展開に始まり、中観派の学匠の思想をたどりつつ、チベットや中国における展開にも触れる。
内容説明
本巻は、インドにおける中観思想の成立から、チベット・中国における展開に至るまで、主たる中観派の学匠について個別にたどりつつ、大乗仏教における空とは何かを論究する。
目次
第1章 中観思想の成立と展開―ナーガールジュナの位置づけを中心として
第2章 ナーガールジュナ作『十二門論』とその周辺
第3章 チャンドラキールティの中観思想
第4章 カマラシーラの中観思想
第5章 ジュニャーナガルバの中観思想
第6章 アティシャの中観思想
第7章 チベットの中観思想
第8章 中観思想の中国的展開―吉蔵の中観思想
著者等紹介
斎藤明[サイトウアキラ]
1950年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。オーストラリア国立大学博士課程修了(Ph.D)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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bapaksejahtera
11
シリーズ第一巻から読むべく全体構成も出来ているが、借入れ都合で第2巻から始めた。数年前「 8 如来蔵と仏性」が面白かった事から、今度は好みの「中観」の本書を選んだが浅学の身には手に余った。中村元著「龍樹」を繙しつつ読んだが、基礎読書を固める事が先決であった。第2巻で大乗経典が同教団の成立に先行したとの記述があった。中観についても、龍樹著作の成立後唯識派と絡みから中観派の水脈が分岐していった点が興味深い。本巻は仏教論理学の理解を進めるが、呉音の仏教と漢音の論理学。中華の文化的後裔たる我が国が恨めしくもある。2022/03/05
マウンテンゴリラ
3
仏教哲学の中核とも言える空と中観について、かなりレベルの高い議論が展開されている。初学者にとっては、理解が困難(あるいは不能)と思われる論考もいくつか見られたが、全体としては、一般人に対しても、その精神に汲み取るべき基本もしっかりと示してくれていたように思う。あれかこれかに傾きがちな人間の思考、特に効率性重視の現代社会的思考に対して反省を求めるという意味で、深い叡知が含まれているということは漠然と理解することが出来た。実用面においても、こだわりや分別知からの解放ということの重要性を感じさせられた。2014/09/30
鯨、或は山田
1
やはり中観、龍樹となると唯識との共通点と差異がその論旨の中心になる。大乗という立場を獲得し、主語が個人から僧伽をも包括した全体になるにあたって、議論の焦点はより普遍的な、「世界とこころ」が(どこに、どこかに)あるのか?といった話になる。ここで仏教の特徴の一つに、この「世界とこころ」にきっちりとした線を引かずに、一元的に見ているところがある。そしてその見方を徹底させながら定理を一つづつ積み上げていく。そこに非合理性はない。2015/09/08