内容説明
本巻は、大乗仏教・大乗経典の成立背景をたどりつつ、アビダルマ仏教やヒンドゥー教、上座部仏教などとの比較を通じて、大乗仏教の思想的特質を浮き彫りにする。大乗の成立をめぐる多角的論究。
目次
第1章 大乗仏教の成立
第2章 経典を創出する―大乗世界の出現
第3章 大乗仏典における法滅と授記の役割―般若経を中心として
第4章 変容するブッダ―仏伝のアクチュアリティとリアリティ
第5章 上座部仏教と大乗仏教
第6章 アビダルマ仏教と大乗仏教―仏説論を中心に
第7章 ヒンドゥー教と大乗仏教
第8章 中世初期における仏教思想の再形成―言説の理論をめぐるバラモン教学との対立
著者等紹介
斎藤明[サイトウアキラ]
1950年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。オーストラリア国立大学博士課程修了(Ph.D)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授
下田正弘[シモダマサヒロ]
1957年、福岡県生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。1993年、文学博士。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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bapaksejahtera
11
仏教思想の読書には馴染みがある。本書に先んじ「1大乗仏教とは何か」を手にする所だが、果たせなかった。①その成立②経典の創出③法滅と授記④ブッダ―仏伝の変容④上座部仏教と大乗⑤アビダルマ仏教と大乗⑥ヒンドゥー教と大乗⑦バラモン教学との対立 が項立てされている。私の理解も多少進んできた為かも知れないが、全体に解り易い記述である。特に②では近年重要視されているGショペンの論考を紹介すると共に更にこの止揚を試みる。更に大乗側に於ける仏典テキストの膨大な創出の指摘と意義の分析は興味深い。仏教研究も常に進展している。2022/02/23
非実在の構想
5
通説とされる三四十年前の学説を修正しており学ぶものが多い。特に経量部の立ち位置や、スリランカ上座部の形成など知らないことばかりだ。2020/04/08
マウンテンゴリラ
2
第2巻においては、大乗仏教の成立について、深く掘り下げた議論が展開されている。その起源において、教団が先か、経典が先かという議論等については、僧侶や仏教研究者以外の一般読者にとって大した問題ではないようにも感じられるが、大乗仏教が誕生したとされる紀元前後の時代において、仏教は人間理性の最高の表現のひとつであったと考えれば、そのような知性の営みがどのような起源を持つものかという問いは大変興味深いものでもあると感じられた。→(2)2014/08/30