出版社内容情報
競歩小説に再起をかける元天才高校生作家と、競歩で東京五輪出場を目指す男、二人の学生の挑戦と交友を描く、傑作青春競歩小説!
内容説明
「天才高校生作家誕生!」という触れ込みでデビューした榛名忍。第一作は二十万部も売れた。二〇二〇年のオリンピックが東京に決まった頃だ。だが、その後、大学生となった忍は思うような結果を残せず燻っていた。そんな折、学内のテレビで流れるリオ五輪ハイライト番組で、競歩の結果を目にする。独特な競技スタイルを不思議に思っていると、背後で男子学生が号泣していた。こいつは一体、なんなんだ!?その夜、忍は担当編集者から、次作は東京オリンピックに向けてスポーツ小説はどうか、と勧められ、思わず「競歩」と口にしてしまう―。青春のきらめきが迸る。スポーツ小説の新たな傑作がここに!
著者等紹介
額賀澪[ヌカガミオ]
1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒。2015年に『屋上のウインドノーツ』で第22回松本清張賞を、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
306
スランプからの脱出をはかる作家と、長距離選手から競歩に転向して再起を図る選手の見事なまでに作家と選手を融合させた話。作家の榛名忍が表現の自由の中で、選手の八千代篤彦は競歩の厳しいルールとタイムの中で、悩み、苦しみ、足掻いて、スランプや伸び悩みから成長していく姿は読んでて、応援したくなった。小説の作る過程、タイムを縮める努力を存分に見せつけられ、読んだ後の余韻が心地よい。そんな中で忍は、脳内で勝手に朝井リョウをイメージ。苦しんで足掻いた努力は、どんな結果であれ、自分の糧になると思わせてくれた。2020/05/04
やま
232
競歩王。 2019.09発行。字の大きさは…小。 スポーツ小説を読むのは、ほぼ始めてと思います。とても面白く読めました。 読みながら時々笑いが出たり、右の拳を握って頑張れ、そこだと言っている自分にビックリしました(笑)。 読める字の大きさの本がなかなか無いなか、読めることに感謝をしています。 物語は、スランプに陥っている作家と、勝てない競歩選手がお互いを理解し、お互いを励ましあいながらオリンピックに向かって行く姿勢がいいです。 額賀澪さんの本を読むのは始めてです。 とても楽しく読めました。感謝。2019/10/24
旅するランナー
231
さあ、始まるぞお、長くて辛くて苦しい、3時間越えの超絶怒涛に過激なレースが。かなり行き詰まってる、50km競歩選手と元高校生天才作家が、共感し合って、共同で、競争に身を捧げる。彼らは、陸上の神様と小説の神様に選ばれるのか? たった一歩を目指して、一歩一歩果てしない距離を歩き、一頁一頁終わりなき小説を書き続ける。その一歩、その一頁が、次のレース、次の作品に繋がるのです。歩いてよかったというセリフに感動します。負けるな! 読者にも発破をかけてくれる、王道感動小説ではない、いい意味での亜流スポーツ小説。2020/01/08
ウッディ
211
高校生としてデビューし、スランプ中の作家・忍は、新作の題材として競歩を選び、箱根駅伝の夢を諦め競歩に転向した八千代と出会う。「誰よりも速くゴールを切りたい、けれど走ってはいけない。」そんな矛盾を抱えた競歩に魅せられ、八千代を応援する忍は、納得する小説を書けたのか?アスリートと作家、ジャンルは違えど、何かに打ち込み、苦しい経験をしたからこそ、得られるものがある。額賀さんが描く変化球のスポーツ小説は、手に汗を握るような興奮や高揚感はなくても、心地良い読後感と人が生きる意味を教えてくれるような気がします。2020/02/03
モルク
192
珍しい競歩を題材としレースシーンを中心とした王道の爽快スポーツ小説のつもりで読みはじめたが…。天才高校生作家として文壇にデビューした榛名も大学生となってからはスランプに悩んでいた。そして1学年下で長距離で箱根駅伝を目指し大学に入学したものの挫折、たった一人で競歩に活路を求める八千代。この二人が出会い、お互いを見つめることで自分と向き合っていく。スランプ、もがき、ライバルへの嫉妬…。二人の苦悩は報われるのか…。脇役も個性があり好感が持てる。マイナーなスポーツながら、過酷な50㎞競歩に俄然注目!2020/10/19