光文社新書
ゲルニカ―ピカソが描いた不安と予感

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  • サイズ 新書判/ページ数 225p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784334034368
  • NDC分類 723.36
  • Cコード C0271

内容説明

二〇世紀の西洋美術を代表する『ゲルニカ』は、描かれた当時、多くの人に衝撃を与えた。この作品は、一九三七年という、ナチズムやロシア社会主義、フランス、ドイツ、イギリスなどの列強の思惑が交錯し、スペインでは内乱が激化するという、ヨーロッパが不安と緊張に包まれた時代に生み出された。しかし、『ゲルニカ』には絵画としての「異質さ」が漂う。そして、これこそが、不安が先鋭化しつつある私たちを今でも虜にする魅力でもあるのだ―。本書では、その製作過程を丹念に追いながら、美術史、歴史画、戦争画などの観点からピカソが直感した「予感」に迫る。さらに、私たちの美術鑑賞のあり方、一枚の絵を見つめるということの本質にまで思いを巡らす。

目次

第1章 神話的メッセージ
第2章 制作過程
第3章 美術史の中の『ゲルニカ』
第4章 オリジナリティと多層性
第5章 呪術的な力―歴史画として読む
第6章 ピカソの予感―「負」の戦争画

著者等紹介

宮下誠[ミヤシタマコト]
1961年東京都生まれ。現在、鎌倉在住。國學院大学文学部教授。スイス国立バーゼル大学哲学博士。早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。専攻は20世紀西洋美術史、美術史学史、画像解釈学、一般芸術学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

修一朗

62
ゲルニカは,もちろん反戦を鮮明に掲げているけれど,牡牛から感じる多義性とか彫像になった兵士とか,モノトーンでなにやら乾いた感じとか,それだけでは収まりきらないものを感じていた。で,丸ごと全部ゲルニカ本。完成版に至る過程を詳細に解説した第二章がよかった。ピカソが様々なモチーフを試しては削り最終版に至ったことがよくわかった。反戦,反ファシズムというだけでなく,蔓延する不安を表現したのだと思う。戦争という枠には収まりきらない絵だと深く納得した。死ぬまでにもう一度ぐらい実物を見てみたいと思っているけど、どうかな…2016/06/06

PAO

21
「『ゲルニカ』にはどこかしら「偽りの壮大さ」の雰囲気が漂っているのだ」…先日マドリッドで見た時に湧いた疑問と違和感にこの本は答えてくれました。『ゲルニカ』は単なる反戦画でなく、もっと多義的で夾雑物に溢れ、冷酷で不安で不遜で商業的で、まさに現代そのものであるが故に俗受けし、ピカソの代表作となった…。私も20世紀の絵を一枚だけ選ぶなら『ゲルニカ』を選ぶでしょう。反面、原田マハの『暗幕のゲルニカ』の様に反戦画としてだけ美化するのは、この絵にとってもピカソにとっても人類にとっても、不幸なのではないかと思いました。2019/03/07

takaya

18
ピカソの「ゲルニカ」について創作の経緯、美術史的意義などが考察されています。制作途中の作品も写真に収められていて、ずいぶん変更があったことがわかります。ピカソ、「ゲルニカ」について関心がある人には、非常に興味深く読める本です。2021/02/06

inami

14
◉読書 ★3.5 BOOKOFFでたまたま目に留まったので「暗幕のゲルニカ:原田マハ」の前に予備知識として読んでみたが、これが何とも濃い(笑)。「ゲルニカ」一点にォーカスしているので、作品自体については相当わかったつもりになる(笑)。作品はピカソがスペインの小都市「ゲルニカ」を襲った無差別大量殺人を告発し、その悲劇を巨大(3.49m✕7.77m)なスケールで一気呵成に描き上げた、20世紀美術史にとっても記念碑的作品で最大の問題作の一つと言われている・・フェルメールが東京に遊びに来ているので会いに行きす・・2018/11/02

湖都

12
先日読んだ『暗幕のゲルニカ』を補填し、厚みを増させるような本である。全編論文調。タイトルは『ゲルニカ』であるが、この作品だけに囚われずにピカソの作風の変化にもかなりの頁数を割いている。そして正直なところ、ゲルニカについてオリジナリティがどうのとかいうよりもそちらの方が面白かった。小さいし白黒ではあるが、図版が多いのも嬉しい。「ミノタウロマキア」に惹かれるという副産物を得た。また、ゲルニカの製作過程の写真を解説付きで見ることができるのも『暗幕のゲルニカ』を読んだ者には感慨深い。2021/03/23

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