出版社内容情報
著作権はいつまで保護されるべきなのか。著作権保護期間の延長問題について理論的整理と客観的な事実を示し、人々の議論に役立てる。
著作権保護期間の延長問題は現在、審議会での議論が続き、一般の関心も高くなってきた。しかし、議論の土台となる理論や事実の整理は必ずしも一般に知られておらず、憶測に基づく主張やごく例外的な現象を大勢とみなす議論がなされがちである。本書の目的は、議論を生産的なものにするため、土台となる理論や事実を調査し示すことにある。
[関連書]林紘一郎編著 『著作権の法と経済学』 (勁草書房刊)
はじめに
序 章 延長問題の客観的な議論のために…………田中辰雄・林紘一郎
1.著作権問題の難解さ
2.バランス論の集合体としての著作権
3.バランス評価の具体例
4.延長賛成と反対の論拠
5.延長問題への選択肢
6.本書の構成
7.著作権延長問題の議論を実りあるものにするために
第Ⅰ部 著作物の寿命と再創造
第1章 本の滅び方:保護期間中に書籍が消えてゆく過程と仕組み
…………………………………………………………………………丹治吉順
1.はじめに
2.調査方法の概要
3.調査――没後の出版数の減少と寡占の進行
4.保護期間が本を滅ぼすメカニズム
補論 1957~66年物故者の著作発行状況調査の詳細
第2章 本のライフサイクルを考える………………………………田中辰雄
1.はじめに
2.著作者没後の収益の過去の研究事例
3.データとバイアスの評価
4.書籍の保護期間延長による収益増加の推定
5.著作者の没後に本が出版される確率
6.おわりに
第3章 シャーロック・ホームズから考える再創造………………太下義之
1.はじめに
2.シャーロック・ホームズのパロディ等に関する分析
3.シャーロック・ホームズの著作権
4.シャーロック・ホームズが導く3つの仮説
5.ウラノスの災い
6.再創造を通じて愛され続ける夏目漱石
7.おわりに
第4章 デジタル環境と再創造……………………………………中泉拓也
1.はじめに
2.モ デ ル
3.ホールドアップ問題のもとでの創作者の利得
4.ホールドアップ問題がもたらす検索行動の過小性
5.外部機会の増加によるホールドアップ問題の軽減
6.おわりに
第Ⅱ部 保護期間と保護方式
第5章 保護期間延長は社会厚生を高めたか:アメリカの場合
…………………………………ポール・J・ヒールド/今川哲也・宮川大介訳
1.はじめに
2.方 法 論
3.パブリック・ドメインと著作権保護のあるベストセラー書籍の入手可能性と価格の比較
4.最も耐久的に人気を有する書籍の入手可能性と価格に関する 比較(1913~32年)
5.混雑外部性
6.おわりに
第6章 保護期間延長は映画制作を増やしたか……田中辰雄・中 裕樹
1.保護期間延長の創作誘因効果の実証例
2.利用する映画データベース
3.これまでの研究との整合性
4.推定結果は頑健か
5.おわりに
第7章 EU・アメリカはなぜ保護期間を延長したか…………酒井麻千子
1.はじめに
2.EUの動向
3.アメリカ合衆国の動向
4.おわりに
第8章 デジタルはベルヌを超える:無方式から自己登録へ
………………………………………………………………………林紘一郎
1.はじめに
2.著作権と無方式主義、保護される情報
3.情報資産の保護方式と登録制度
4.デジタル化による脆弱性の露呈
5.ⓓマークと自己登録制度
6.新しい任意登録制度と検討課題
7.登録と権利保護期間の関係
終 章 保護期間延長問題の経緯と本質……………林紘一郎・福井健策
1.はじめに
2.保護期間が有限である理由
3.所有権と著作権の関係、デジタル化の影響
4.保護期間が著者の死後も続く理由
5.保護期間の最適設計
6.日本における保護期間延長問題の経過
7.「延長問題を考えるフォーラム」における議論
8.今後の課題と若干の提言
文化審議会著作権分科会資料(抜粋)
索 引
内容説明
著作権はいつまで保護されるべきなのか。著作権保護期間の延長問題について理論的整理と客観的な事実を示し、憶測に基づく主張や、ごく例外的な現象を大勢とみなすような議論を見直す。
目次
延長問題の客観的な議論のために
第1部 著作物の寿命と再創造(本の滅び方:保護期間中に書籍が消えてゆく過程と仕組み;本のライフサイクルを考える;シャーロック・ホームズから考える再創造;デジタル環境と再創造)
第2部 保護期間と保護方式(保護期間延長は社会厚生を高めたか:アメリカの場合;保護期間延長は映画制作を増やしたのか;EU・アメリカはなぜ保護期間を延長したか;デジタルはベルヌを超える:無方式から自己登録へ)
保護期間延長問題の経緯と本質
著者等紹介
田中辰雄[タナカタツオ]
1957年、東京都に生まれる。東京大学大学院経済学研究科単位取得退学。国際大学グローバルコミュニケーションセンター研究員、コロンビア大学客員研究員を経て、慶應義塾大学経済学部准教授。専攻、計量経済学
林紘一郎[ハヤシコウイチロウ]
1941年、台湾に生まれる。東京大学法学部卒業。経済学博士(京都大学)、法学博士(慶應義塾大学)。NTT勤務、慶應義塾大学を経て、情報セキュリティ大学院大学教授。専攻、法と経済学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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