内容説明
精神医学はどこへ向かうのか。50年ほど前から画期的な進歩がない精神疾患治療。直面する困難を乗り越え、精神科医療にイノベーションをもたらすために、いま求められていることを問い直す。
目次
精神疾患解明の重要性
現代社会と精神医学
この二五年の精神医学の変化
精神医学の歴史を振り返る
精神医学と脳科学
精神疾患の生物学的研究の現状
現在の精神疾患の生物学的研究の限界
目指すべき精神科診療の姿
なぜこれほどまでに精神疾患の解明が遅れているのか
精神疾患解明へのロードマップ
精神疾患のゲノム研究の歴史と今後の課題
精神疾患の動物モデルの課題
精神医学研究の倫理
臨床研究と基礎研究
基礎と臨床の連携の必要性とその課題
脳組織研究の課題
精神医学の行方
著者等紹介
加藤忠史[カトウタダフミ]
1963年東京都出身。1988年東京大学医学部卒業。滋賀医科大学精神医学講座助手、東京大学医学部精神神経科助手、同講師を経て、現職、独立行政法人理化学研究所主任研究員、脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チームシニア・チームリーダー。医師、博士(医学)。専門は双極性障害の神経生物学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
バーニング
3
精神疾患の根本的な治療を目指す著者の情熱がベースにあるエッセイ集という形だが、文章は膨大な先行研究や精神医療史をベースに書かれており説得力がある。精神疾患は単なる心の病ととらえるのではなく脳にもっと着目すべきだという主張はまっとうだと思うし、そのための研究のありかたや創薬のあり方を構想してはいるが、同時に本書で示される現状の停滞を打破するのは困難であるということもよくわかる。精神医学の未来はまだまだ難しい道のりだなと感じる。2017/11/29
ぐうたらパンダ
2
精神疾患における臨床と基礎研究の噛み合わせがなかなかうまくいかない、という状況がよくわかった。エビデンスに基づくことは重要であるが、それにも問題があることを初めて知った。臨床と基礎の全体を合わせてプロデュースというか、そういう政策?を立案実行できるような仕組みが必要なのではないかと思った。2013/09/24
Arte
1
過去の経緯から今の状況まで、非常に分かりやすく解説されている。一番驚いたのは、脳の検体がないこと。生検できないのはまあ当たり前だが、死後の検体もないとは。そりゃ研究できないねえ。今使っている向精神薬も偶然見つけたようなものだし(まあそこは他の薬も似たようなものだが)、客観的な診断が難しいので、臨床研究に参加する患者の選択も難しいし、そもそも動物実験が難しい。精神科の知識はプレコックス感から進んでいなかった私にはとても面白かった。お勧め。2018/07/11
伊勢田和良
0
「うつ病の脳科学」と「岐路に立つ精神医学」を読みました。 ともに精神科医・加藤忠志先生の著作です。 熱い本です。 精神医学の現状、抱えているる問題・課題について明確に書かれています。どちらも一般向けで同じような内容ですが「岐路に立つ精神疾患」は、学術的というか少々カタイです。 日本の自殺者年間3万人の半数は、うつ病です。 休職の理由の筆頭は、うつ病です。 うつ病は、社会的なロスの多い病気です。 かって患者・家族を安心させるために、「脳が風邪を引いたようなもの」と言われた時期もありましたが、そ2014/09/09