内容説明
哲学最大の難問の一つ、「意識の謎」に挑戦する。
目次
第1章 意識のハード・プロブレム―特別な難問
第2章 意識のハード・プロブレムは解決不可能か
第3章 意識の表象理論―もっとも有望な理論
第4章 意識の表象理論の問題点
現在地点の確認
第5章 本来的志向性の自然化―表象とはなにか、もう一度考えてみる
第6章 ミニマルな表象理論―意識と表象の本当の関係
第7章 ギャップを無害化する
結論、または間違いさがしのお願い
著者等紹介
鈴木貴之[スズキタカユキ]
1973年、神奈川県生まれ。2003年、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。南山大学人文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
32
読むのに半年くらいは掛かった。それは、この問題が通読すれば良いという問題ではなく、物理主義、精神分析(自己言及)、AI、宇宙といった問題に関係しているからだ。本書がこれらの問題に対して何らかの解答を与えているのかといえば全く与えていない。意識経験を志向性としてとらえ、意識経験の因果的な原因に表象があるとして、表象理論を様々に追求していく。理論的なことと経験的なことに架橋されるのかといえば、そこは問題にならないという結論で終わる。恐らくだが、この問題は①この本でいう物理主義は外環のことで、生命の生態(内環)2022/10/08
izw
10
「できるだけ明快に」という基本方針で書かれているだけに、読み終えることはできたが、ハードプロブレムが解決できたのかどうかを理解することができていない。もう一度丹念に読んでみたい気もするが、気力が続くかどうか不明である。2017/11/09
Gokkey
8
直前に読んだシュレーディンガーの著書のエピローグ(https://bookmeter.com/books/2264)のシュレーディンガーの頭の中がそのままタイトルになったような一冊(このタイトルに対する回答は最後にあります)。著者の学位論文がベースになっているので、よくあるパターンの冒頭レビューからの本論展開で、関連領域の知見のまとめとしても有用でした。著者が採用するアプローチは物理主義という、意識は自然科学的な枠組みの下で理解可能だというもので、チャーマーズのような思考可能性論証に反した論考を展開する。2020/02/18
鼠に訊こう
5
意識の表象理論について、その考え方やどのような問題が指摘されているのかを、かなり体系的に書いてあるので教科書を読んでいるような気分になってくるが、素人がスラスラ読めるようなモノでもないので結構大変だった。とはいえ、一度がんばって読んでおけば他の心の哲学系の本は読みやすくなりそうな気もする。 意識のハード・プロブレムについては、挙げられた問題点は解消できてるようにも見えるが、いかんせん自分が素人なので細部はよくわからないしなあという印象。2015/08/12
田蛙澄
4
割とクレインや戸田山さんらと近い感じの話だった。しかし表象理論系のを読むたびに、志向性を担保している因果関係は本当に知覚や知識を正当化するのかという疑問が生じる。マクダウェル的に言えばそれは合理性と因果性の混同なのではないか。しかし一方でマクダウェルの魔術的自然観も受け入れがたいので、そうなるとこちらの自然主義的なミニマルな表象論の方が望みはありそうだ。結局我々の受け取っているのは世界についての経験的な性質で物理的な性質ではないけど、それは物理主義的に理解可能だという話だった。問題は物自体だという気がする2016/10/18