健康格差と正義―公衆衛生に挑むロールズ哲学

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  • サイズ B6判/ページ数 153,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784326153961
  • NDC分類 498
  • Cコード C3012

出版社内容情報

格差社会は健康に悪い──社会疫学で検証が進むこの仮説に、ロールズ流の正義論はどう向き合うのか。沸騰する議論と提言を示す。

私たちの健康を左右する要因のうち、社会経済的な要因を問題にする社会疫学。本書は米国の社会疫学研究をリードするカワチとケネディが、ロールズの正義論を専門とするダニエルズと組んで政治哲学的な観点から健康を論じた論文を中心に、多様な反論と応答を収録。センによる序文も必見。懇切な訳者解説を付して、分野の活況を見渡す。

[関連書]カワチ、ケネディ 『不平等が健康を損なう』(日本評論社)


監訳者まえがき 児玉聡
序 アマルティア・セン(児玉聡訳) 
編者まえがき ジョシュア・コーエン、ジョエル・ロジャーズ(児玉聡訳) 

     Ⅰ

ノーマン・ダニエルズ、ブルース・ケネディ、イチロー・カワチ(福間聡訳)
正義はわれわれの健康によい

     Ⅱ

マイケル・マーモット(米典子訳)
格差は問題か

マーシャ・エンジェル(児玉聡訳)
貧困層の存在

スディール・アナンド、ファビエンヌ・ペーター(板井広明訳)
機会の平等

テッド・マーモー(田口空一郎訳)
政策上の選択肢

エゼキエル・エマニュエル(石川涼子訳)
政治的な問題

バーバラ・スターフィールド(米典子訳)
プライマリ・ケア

エマニュエラ・ガキドゥ、フリオ・フレンク、
クリストファー・マレー(井上まり子訳)
健康に関する一つのアジェンダ

ステフィ・ウールハンドラー、デイヴィッド・ヒメルスタイン(松元雅和訳)
ロスト・イン・トランスレーション

     Ⅲ

ノーマン・ダニエルズ、ブルース・ケネディ、イチロー・カワチ(島内明文訳)
コメントに対する応答

訳注
監訳者解説 児玉聡
監訳者あとがき 児玉聡
索引

内容説明

格差社会は健康に悪い―社会疫学で検証が進むこの仮説に、ロールズ流の正義論はどう向き合うのか。沸騰する議論と提言を示す。

目次

正義はわれわれの健康によい
格差は問題か
貧困層の存在
機会の平等
政策上の選択肢
政治的な問題
プライマリ・ケア
健康に関する一つのアジェンダ
ロスト・イン・トランスレーション
コメントに対する応答

著者等紹介

ダニエルズ,ノーマン[ダニエルズ,ノーマン][Daniels,Norman]
1942年生まれ。1970年、ハーバード大学大学院修了(Ph.D)。ハーバード大学公衆衛生大学院公衆倫理学講座教授、倫理学・公衆衛生学講座教授

ケネディ,ブルース[ケネディ,ブルース][Kennedy,Bruce]
1960年生まれ。1994年、ハーバード大学大学院修了(Ph.D)。ハーバード大学公衆衛生大学院公衆衛生・国際保健医療講座客員研究員、2008年没

カワチ,イチロー[カワチ,イチロー][Kawachi,Ichiro]
1961年生まれ。1991年、オタゴ大学医学部修了(M.D.、Ph.D)。ハーバード大学公衆衛生大学院社会・人間開発・健康講座社会疫学教授

児玉聡[コダマサトシ]
1974年生まれ。2002年、京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、博士(文学、2006年)。東京大学大学院医学系研究科講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

うえ

7
健康及び保健医療の公正を問題にした論文とリプライを収録。「ロールズの分配原理(格差原理)の焦点は、基本的に資源の分配にあり、個人が結果的に何を達成したとか、結果的に何をする自由を得たか(たとえばよい健康状態や、よい健康状態を維持する潜在能力など)にあるのではない。この区別は重要であり、所得や保健医療や他の資源によって健康が改善する傾向にあるからといって、単にそれだけで消え去ることのない区別である。…しかし他の要因ーたとえば個人的特徴や周囲の気候、地域の伝染病などーもまた、健康の達成度に影響を与える」2022/02/12

Schuhschnabel

4
社会疫学に基づく実証的な研究とロールズの正義論という規範の学とを融合した意欲的な論文とその批判からなる書。学科で学んでいる姿勢と相通ずるところがある。本書は格差が社会問題化しているアメリカを念頭において書かれているため、さほど倫理的な葛藤を感じない。しかし、これが途上国の場合、「これをすれば〇人の命が救える」というエビデンスのある医学的介入を差し置いて、因果関係もわかっていない健康の社会的決定要因を改善する介入を行うということにためらいを覚えるかもしれない。2017/04/17

はるくる

1
構成がとてもよかった。たたき台となる論文をかきくだしたもの、それに対する賛否両論が複数人から、そして全体を通しての解説。こういう分野って理論はわかりやすくても、実証するの難しいんだろうなあ…統計だけではみられないことがいっぱいありそう。そもそも統一した理論(社会正義は健康によい)を作るべきかもわからなくなったけど2017/08/29

ソーシャ

1
ロールズ正義論を使って健康格差問題に挑もうという内容の論文と、それに対する何人かの識者のコメントを載せた本。健康問題に格差原理をどのように適用するかなど理論的な問題についても検討されています。2014/02/24

snoringdog

0
たぶんマニア向け。なのですが、各国の政治的な背景、経済の発展とヘルスに投じられた資金と、適切に資金が使われたかどうかを読み取ることができるという優れモノ。JusticeとHealth Equality の関係が、とってもわかりやすく書かれています。「社会的決定要因」という言葉の概念がどこまでを包含するのかがまだ腑に落ちないのですが、ロールズと結びつけて考えてなかった私は目からうろこでした。2008/09/13

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