内容説明
ヨーロッパに今なお現存する凄惨な歴史の舞台となった古城の数々。ジル・ド・レエがソドミーに溺れたシャトー・シャントセの廃墟。怪奇な伝説が渦巻きメアリー・シェリーの想像力を刺戟したフランケンシュタイン城。串刺し公ドラキュラが拷問に明け暮れたトランシルヴァニアの城塞等々。英国人写真家サイモン・マースデンがアイルランド、イギリス、フランス、ドイツ、ルーマニアの幽霊城を訪ね、その血塗られた歴史を繙く。
著者等紹介
マースデン,サイモン[マースデン,サイモン][Marsden,Simon]
1948年イギリス生まれ。赤外線写真を使った幻想的、超自然的な作風で廃墟や霊域を撮り続け、国際的な評価を確立している写真家。ゲッティ美術館、パリ国立図書館、ヴィクトリア&アルバート美術館などがコレクションを所蔵している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
89
お気に入りの方の感想を見て、昔持っていたことを思い出し懐かしくなり再読。当時の記憶とこの本の発行年からすると、持っていたのは別版かも。レタリングを真似てカードや装飾品を作った思い出。ハロウィン気分にぴったりの一冊なので、今の季節お薦め! 表紙の印象通りの、妖しく幻想的な古城の写真集ではあるけれど、不穏なエピソードがぎっしり書いてあり、雰囲気を盛り上げてくれる。ゴシックホラーのエッセンスを芸術の域に達するまで濃縮した本。【オール・ハロウズ・イヴ(All Hallow's Eve)Horror読書会’21】2021/10/13
HANA
73
アイルランドからイギリス、フランスそしてルーマニア、幽霊の伝承をも持つ城を探訪した一冊。著者自身が見聞きしたそれぞれの城の伝承も興味深いんだけど、やはり一番素晴らしいのはその写真。赤外線写真という手法を駆使したモノクロの写真は木炭画のようでもあり、何となく死後の世界や人間の滅びた後の世界というものを連想させられる。ベルサイユ宮殿とかもっと華やかな印象なのにな。どの写真もいいのだが、個人的にはストーンサークルやドイツのうらぶれた城、ドラキュラの墓などが好ましかった。写真も突き詰めれば幻想に至るのであるな。2017/04/16
なる
41
ゴシック患者の共通言語であるベクシンスキーを好きならきっとマースデンも好きだと勧められ手に取った本作。幽霊屋敷に生まれ育ったという異色の経歴を持つ写真家が、いわくつきの話が漂う朽ち果てた修道院や古城へと赴き、その場でしか感じ取れない独特の空気をレンズの中へ切り取る。大部分がイギリスにある。こんなにも多くの古城があるとは。城と言いつつ小さな砦のようなものもあるしおそらく廃墟になっているものもある。1枚ずつその城にまつわる幽霊のエピソード(日本の戦国時代でもありそうな伝説)が読み応えある分量で添えられている。2021/08/11
らぱん
41
曰くのある城や砦に赴いて撮影した写真集で、アイルランドからブリテン島を経て、フランス、ドイツからルーマニアで終わる。30か所ほどを巡るのだが、とにかく写真が素晴らしい。赤外線写真という手法で、幽玄な、幻想的な、この世のものとは思えない雰囲気を醸し出している。多くが遺跡となり、廃墟と化しているが、住人のいる館もあり不思議なものと共存しているらしい。ある館の当主は、敷地がケルト人がエッジ(境界)と呼ぶ聖地であり、目に見えない力が存在すると語る。テキストは文学的であり、芸術性の高い写真集として楽しめる。2019/07/20
内島菫
27
粒子は粗いが透明度の高い悪夢のような古城の写真集。露出やハイライトの効果で、外の風景なのに水槽の中のように見える不思議な美しさがある。私はやはりアイルランドやイングランド、スコットランド、ウェールズの自然と一体化し秘められた部分を多分に残す古城に魅力を覚える。大陸へ渡り、フランス、ドイツ、ルーマニアとページを読み進むにつれ、幽霊よりも生前の人間の残虐さの方が目立ち、怖さは増すものの幽玄な趣が減るのは致し方ないか。2019/06/21