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伊能大図総覧

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  • サイズ キガイ判/ページ数 3冊(解/高さ 3754cm
  • 商品コード 9784309812014
  • NDC分類 291.038
  • Cコード C3521

出版社内容情報

2006年12月25日発売!≪限定300部≫
日本全図を網羅した基本図の全貌
原図と鮮明に再現した本邦初の集大成!

【造本・体裁】
◆B3変型判(525×396ミリ)/表紙外寸535×405ミリ/上下巻/束幅各60ミリ/縦綴/右開き
◆本文地図 B2変型判(525×740ミリ)二つ折り/片面4色刷横綴展開/用紙=ジェントル フェイス/地図面の最大寸法=縦475×横658ミリ
◆○上巻=前付16頁/地図117枚 ○下巻=前付4頁/地図120枚 ○地図総数237枚
解説書(索引付)全1冊/B4判/256頁
表紙=クロス装(上巻=臙脂/下巻=紺)/函入り

【刊行のことば】
●渡辺一郎(伊能忠敬研究会名誉代表)
二〇〇四年の「アメリカ伊能大図展」を機に、約三十年にわたって探し求めてきた伊能忠敬の日本地図がすべて出そろった。正本に限りなく近い副本、諸侯に献呈された副本、江戸期の写本、明治以降に作製された模写本など、由来はさまざまであるが、大・中・小図の計二百二十五枚をすべて勢ぞろいさせることができた。
 引き続き、これら伊能図の面影を精細かつ鮮明な図版として、誰もが容易に閲覧できるようにし、さらに後世にも伝えるべく、基本図である伊能大図の出版を企図した。幸いに関係者の大変なご尽力で、国内外の各地に伝存する最も優良な大図を集めて本巻『伊能大図総覧』の刊行が実現したことを、心から慶びたい。

【伊能図の意義】
●鈴木純子(日本国際地図学会評議員・元国立国会図書館司書)
日本の近代地図のさきがけとされる伊能図は、伊能忠敬とその測量隊の長期にわたる測量に基づく全国の実測図である。海岸線と主要街道を骨格とし、周囲の景観を絵画風に描く彩色された手稿図で、縮尺に応じて記号や注記を駆使している。およそ二百年前の江戸時代に、あしかけ十七年、十次にわたって測量が行なわれ、その各段階で多くの地図が作られた。すべての地図を伊能図と総称するが、その中で最も重要な図は、文政四(一八二一)年の「大日本沿海輿地全図」、いわゆる最終上呈図である。大図(約三万六千分の一)二百十四枚、中図(約二十一万六千分の一)八枚、小図(約四十三万二千分の一)三枚と、「大日本沿海実測録」十四巻からなる。中・小図は、実測図である大図を集成して製作された編集図であり、その意味で大図は、伊能図の基本図といえる。伊能図は同時代の水準を超えた正確さで広く知られる。形状だけでなく、天文測量などによって、位置の精度も追究したことで、近代地図の第一歩となった。一貫した方法により全国を測量した点でも画期的なものである。さらに、記載内容が格段に詳細な大図の場合、伊能隊の測量事蹟の追跡や、地域史の資料としての役割も見逃せない。長い間、ごく一部の所在しか知られなかった大図の記載内容の検討はこれからであり、十九世紀初頭のわが国の地誌を伝える記録として、大きな可能性が期待できる。すべての記載文字が判読できる最新印刷技術によって伊能大図の全図幅が再現され、いつでも利用できるようになる意義は非常に大きい。

【発見の歴史】
江戸幕府に献呈された伊能図の最終上呈図は、明治政府に引き継がれた後、明治六(一八七三)年の皇居火災で焼失、伊能家にあった控え図も東京帝国大学に保管された後、関東大震災で焼失したと見られている。
皇居火災で失われたこの最終上呈図を正本といい、諸侯への献呈図など写図のための針穴があって伊能測量隊による製作が確かなものを副本という。副本と同じだが未完成か完成度の低い図を稿本、江戸期に副本を写したものを写本、明治以降に写されたものを模写本とそれぞれ呼ぶ。
伊能大図に限って見れば、つい最近まで存在が明らかだったのは、長崎県平戸市にある松浦史料博物館所蔵の五図と山口県文書館所蔵の七図で、いずれも副本と考えられる。これに国立歴史民俗博物館所蔵の秋岡コレクション五図の模写本を加えて、たった十七図にすぎなかった。これらはしかし、正本の面影をたどれる数少ない図幅として知られていた。
一九九七年秋、気象庁で偶然にも四十三図にのぼる貴重な大図の模写本が発見され、国立国会図書館に移管された。
そして二〇〇一年三月、ワシントンのアメリカ議会図書館から、本巻の監修者である渡辺一郎氏の手により、一挙に二〇七図もの大図の模写本が発見され、日本のメディアを騒然とさせた。この歴史的な発見によって、伊能大図二百十四図すべてが私たちの目の前に、初めてその全貌を現したのである。
本巻は、国内にある現存図のうち最終上呈図に最も近い完成度で保存状態のよい上質な図幅を厳選し、欠図をアメリカ議会図書館の大図のうちの百五十四図で補完することによって、日本全国を網羅したものである。また、一九九六年に東京国立博物館で確認され、重要文化財にも指定されている美麗で完成度が高い「九州沿海図」(最終上呈図ではない第一次九州測量成果)二十一図を参考図として下巻末に付け加え、重複参考図二図を含めて総計二百三十七図を収録する。

【伊能大図の特色】
●星埜由尚((社)地図協会理事長・元国土地理院院長)
伊能忠敬の十次にわたる全国測量は、前半の四回は幕府の許可を得たいわば補助事業で、後半の測量は幕府の直轄事業として国家の事業となった。伊能測量とその成果である伊能大図は、二百年前の国土の状況を記録した公式地図であるといえる。この伊能大図をつぶさに点検してみると、江戸中期から幕末にかけてのわが国の国土がどのような姿であったかが浮かび上がってくる。
伊能大図には、さまざまな事象が記載されている。まず最も大事なのが測線で、測量の軌跡であり、位置を測量した点を連ねた赤い線で描かれている。伊能測量は日本の形を明らかにすることが目的だったため、測線はできるだけ海岸線と一致するように採られている。
測線とともに、宿駅、天測点、湊が、ときには神社の鳥居も赤色の記号で表示されている。河川や湖沼は青色で、砂浜は黄橙色に塗られており、集落は屋根を連ねる家並みを描いているものと小さな矩形の黒抹で表現しているものとがある。山は濃緑色で山景を表し、樹木を小さく添えて絵画的に表現していることがある。また、田畑は筋交い状の赤橙色の線で表現されていることが多い。
伊能大図にはまた、多数の地名が記載されている。天保郷帳に掲載されている村名と比較してみると、大部分の地名は一致する。もちろん不一致もあり、漢字名は異なることも多い。しかし、これらの地名を現在と比較してみると、現在に引き継がれている地名が多いことに気がつく。さらに、島や岬の名称は詳細にわたっている。現在の名称とは異なる場合も多いが、極めて小さな島まで詳細に測量して名称を記載していることは、驚嘆に値する。
伊能測量は、日本歴史上初めての科学的な実測地図である。この観点から見ると、河川の河口部や内湾の沿岸部などが現在とはまったく異なっていた状況が見て取れる。また、測線の跡をたどると当時の街道の経路を知ることもでき、現在の道路の状況と比較して興味の尽きないところでもある。

【高精度の印刷技術】
本巻の印刷は、日本写真印刷株式会社が長年蓄積してきた高精細な美術書籍の印刷技術と、寺社仏閣、美術館・博物館の国宝を含む文化財を複製・復刻してきた制作技術をベースにして、最新の製版印刷技術である「Viファイングラフ・テクノロジー」を駆使した成果である。
<1>微妙なディテールを忠実に再現──微小な点の密度によって画像が持つ細部、微妙な風合いや質感を、高精度に復元。
<2>微細な文字や描線をシャープに再現──従来の印刷技術で課題だった「網点による線切れ」を解消し、細やかな墨文字や細い描線を鮮明に表現。
<3>鮮やかで冴えのある色合いを再現──印刷の表現領域を拡大することで、特に淡い緑色・黄橙色・紫色をなめらかで濁りの少ない色調で再現。

【本巻の特徴】

<1>日本全国を網羅した本邦初の大図集成
 伊能図の基本図である大図の全域を統一してまとめた初めての決定版地図集成。今まで部分的にしか公開されなかった、二百年前のわが国の最も詳細な全容が明らかになる。およそ畳一畳大の原図を、扱いやすく見やすい三〇〜四〇%の大きさに縮小し、印刷可能な最大縮尺で全二百十四図を一挙掲載。収録図の仕上がり縮尺は、約八万分の一〜十二万分の一。

<2>最も上質な図幅を厳選して収録
 国内に現存する最も上質で最も完成度の高い図幅を厳選し、欠図をアメリカ議会図書館の大図で補完した最終完全版。収録図の所蔵先と図数──国立国会図書館蔵四十三図、山口県文書館蔵六図、松浦史料博物館蔵四図、国立歴史民俗博物館蔵五図、海上保安庁海洋情報部蔵四図、アメリカ議会図書館蔵百五十四図。さらに参考図として東京国立博物館蔵「九州沿海図」二十一図を加え、総計二百三十七図を収録。

<3>原図を鮮明で克明に再現した高精度の印刷
 驚くべき精密さで記録された原図の価値を維持し忠実に再現するために、最新の印刷技術と長年の経験を駆使。村名や島名などきわめて小さな記載文字をはじめ、伊能図の要である測線など微細な描線を明瞭に浮き立たせ、色彩豊かな美術的な側面にも充分配慮した、かつてない鮮明でシャープな印刷を実現。

<4>歴史的な資料価値と現代に役立つ基本文献
 地方の時代といわれる現代、地域の歴史と文化を再評価し研究するために活用できる重要な地理の基本文献。近代実測地図として、学術的な自然・人文地理、歴史・経済地理、地誌などはもとより、広く郷土研究、あるいは環境学などにも有効な史料であり、さまざまな発見の可能性が期待できる後世に残すべき貴重な原石。

<5>全地名を網羅する充実した索引付き解説書
 各図の特徴を解説するとともに、地図に記載されている全地名を分野別に整理して各図ごとにまとめた一覧表と、検索を可能にした総索引を、解説書に付す。基礎史料として欠かせない文字情報が地図と相補的に照合できることで、史料的な有用性を格段に高めた。二百年前の国土を調べるために非常に役立つデータ。