灯台へ/サルガッソーの広い海

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  • サイズ B6判/ページ数 483,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784309709536
  • NDC分類 933
  • Cコード C0397

出版社内容情報

神秘的な光を放つ灯台を夢見る母子を中心に人々の内面のドラマをリリカルに描いた名作の新訳決定版と、植民地出身作家が帝国の辺境に生きる人間の葛藤を描くもう一つの『ジェイン・エア』。

内容説明

灯台を望む小島の別荘を舞台に、哲学者の一家とその客人たちの内面のドラマを、詩情豊かな旋律で描き出す。精神を病みながらも、幼い夏の日々の記憶、なつかしい父母にひととき思いを寄せて書き上げた、このうえなく美しい傑作。新訳決定版(『灯台へ』)。奴隷制廃止後の英領ジャマイカ。土地の黒人たちから「白いゴキブリ」と蔑まれるアントワネットは、イギリスから来た若者と結婚する。しかし、異なる文化に心を引き裂かれ、やがて精神の安定を失っていく。植民地に生きる人間の生の葛藤を浮き彫りにした愛と狂気の物語(『サルガッソーの広い海』)。

著者等紹介

ウルフ,ヴァージニア[ウルフ,ヴァージニア][Woolf,Virginia]
1882年ロンドン生まれ。父レズリー・スティーヴンは著名な文芸評論家。13歳で母を亡くし、その頃から生涯続く精神の病に悩まされるようになる。父没後、兄たちとブルームズベリー・グループを作り、家には当時活躍中の文学者や芸術家が大勢出入りした。1915年『船出』でデビュー。その後『ダロウェイ夫人』など次々に小説を発表。プルーストやジョイスと並んで独自の心理主義を追求し、モダニズム文学の旗手として高く評価される。41年『幕間』を残し自殺

リース,ジーン[リース,ジーン][Rhys,Jean]
1890年イギリス領ドミニカ島生まれ。16歳のときイギリス本国に渡り、結婚後はパリに移り住んでフォード・マドックス・フォードらの知遇を得る。『セーヌ左岸およびその他の物語』など、自らの体験に取材した小説を次々に発表する。第2次大戦中に一時消息を絶つが、66年『サルガッソーの広い海』の成功によって復活し、以後も、作品集を発表した。79年死去

鴻巣友季子[コウノスユキコ]
1963年東京生まれ。お茶の水女子大学大学院修士課程英文学専攻

小沢瑞穂[オザワミズホ]
東京生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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starbro

206
世界文学全集完読プロジェクト https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11684481?sort=book_count&order=desc 第十三弾から第Ⅱ期突入です。本巻は、ロンドン生まれ&ドミニカ生まれの英国女性作家のカップリングでした。オススメは、『サルガッソーの広い海』です。但し、WhiteRumを白いラムと訳してはいけません(笑) 続いてⅡ-02へ。 https://www.kawade.co.jp/np/special/3677774465/2021/05/11

藤月はな(灯れ松明の火)

99
「サルガッソーの広い海」のみ、読了。『ジェーン・エア』のロチェスター氏の妻、バーサ(アントワネット)視点による異国の地で生まれ、育った者の苦しみと孤独が丹念に綴られている。アジェンデ作品や『恥辱』のように嘗て、支配していた人々の反乱による残虐さに心を傷つけられ、全てを失ったアントワネット。植民地では「支配者の血を引く者」と憎悪され、白人の国では「異国の血が混じり、蔑んでも暗黙の内に許される者」という立場。夫からは狂ってしまったと言われる亡き母、バーサと呼ばれる。先祖の罪の償いというにはあんまりではないか。2017/03/07

はたっぴ

83
【灯台へ】G1000作品。子だくさんのラムジー家のある日を切り取り、重層的に描かれている。人間の脳は絶えず思考を続けるそうだが、登場人物の呟きや細やかな心理描写に呑み込まれそうになりながら頁を捲り続けた。ここで流れる時間はそれほど長くはないが、ラムジー家と彼らを取り巻く人々の幸せの記憶が心に刻まれる作品。【サルガッソーの広い海】『ジェイン・エア』の裏版となるそうだが、これはこれで共感を覚える物語だった。著者自身が経験した偏見や不幸が生み出した作品と捉えれば、優劣をつける意味もなく、それぞれに素晴らしい。2018/08/12

たーぼー

66
灯台へー突如として『死』が待ち受ける第二部の急展開。ここに本作を名作たらしめんとする煌めく瞬間がある。一人の若者の不吉を暗示する言葉が現実となる。この行為によって、様々な事象を通り抜けてきた人々の10年という時間の苦悩と歓喜が一斉に構築され、作品に律動を与えるのだ。昨日の夜は朝、振り返ったとき、すでに一つの比喩にすぎない。同じ様に明日、灯台へ行ける可能性は千に一つもない。風向きは始終変わるのだから。習慣も、忘我も、希望も、希望に裏切られた悲しみも全てが包括された彼岸に、灯台へ向かう人々は存在するのだろう。2017/01/25

ゆう

43
「灯台へ」ウルフが採る意識の流れという手法は、多弁・他視点的なのに、ちっともうるさくないから不思議だと思っていた。多声的な語りは、人々の生活を語りながらも、徐々に精霊の声のような響きをもつ。本作を読んで、事実精霊の語りなのだと思った。第一部で他愛のない家族の風景が描かれたあとの第二部。家族が去った後の館、そこを過ぎていく何年もの時間が意識の流れで描写されるのだが、ここでは時間や風や星が意識の流れの主体となったかのようだ。人々の声は遠景としてさざめくに過ぎない。この容赦なさと美しさ。永遠に読んでいたい文章。2019/08/14

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