出版社内容情報
画家ゴーギャンと、その祖母で革命家のフローラ・トリスタンの激動の生涯を辿った、ラテンアメリカ文学巨匠の待望の大作を初紹介。夢を追いつづけて逆境を見事に生き抜いた二人の偉大な先駆者を、リョサは力強い筆致で描ききる。
内容説明
フローラ・トリスタン、「花と悲しみ」という美しい名をもつ一人の女性。彼女は、女性の独立が夢のまた夢だった19世紀半ばのヨーロッパで、結婚制度に疑問をもち、夫の手から逃れて自由を追い求めた。そしてやがて、虐げられた女性と労働者の連帯を求める闘いに、その短い生涯を捧げることとなる。ポール・ゴーギャン。彼もまた、自身の画のためにブルジョワの生活を捨て、ヨーロッパ的なるものを捨てて、芸術の再生を夢見つつ波瀾の生涯をたどる。貧困、孤独、病など、不運な風が吹き荒ぶ逆境の中、それぞれのユートピアの実現を信じて生き抜いた二人の偉大な先駆者を、リョサは力強い筆致で描ききる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
212
2人の強烈な個性が、全く交錯することがないままに物語は進んでいく。1人はポール・ゴーギャンであり、もう1人はその祖母フローラ・トリスタンである。ゴーギャンは画家としてばかりか、その生涯も比較的よく知られているが、一方のフローラは労働運動家であった。「労働者を団結させ、女性の平等を勝ち取る」ことを生涯の目標としていたのである。この2人はいずれも共に時代を先取りし超越する、いわば天才であった。そして、それゆえに孤高を保ち、精神の孤独の中に生きねばならなかった。彼らに「おまえ」と語りかけるリョサの共感は熱い。2014/07/24
starbro
197
世界文学全集完読プロジェクト https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11684481?sort=book_count&order=desc 第二巻は、ラテンアメリカ文学、20数年前に旅したタヒチを想い出しました。タヒチはやはり楽園です。続いて第三巻へ。【読メエロ部】 https://www.kawade.co.jp/np/special/3677774465/2021/03/05
藤月はな(灯れ松明の火)
105
全てを捨てて後世に偉大な画家として評されるようになるポールと祖母で急進的な女性・労働者解放運動家のトリスタン。血の繋がった二人の共通点は体制と神職関係者に反逆しつつも強かに利用し、人の好意には鈍感な困ったちゃんで、自分を曲げなかったことだ。ゴーギャンの章ではアルルの狂った男(ゴッホ)との交流は当然、描かれている。しかし、トリスタンの章で若き日のマルクスとのやり取りがあったのは嬉しい誤算でした。そして二人を愛称で呼ぶ、高次の視点(読者の視点?)が無茶苦茶に頑張る二人を窘めつつも優しいのも印象的でした。2018/05/28
榊原 香織
75
ゴーギャンと彼の祖母、初期社会主義者フローラ・トリスタンの人生を交互に。 ゴーギャンはタヒチ行ってからの話。 後半で”狂ったオランダ人”ゴッホを偲ぶエピソードや、中年で急に絵に目覚めたことが出てくる。 ペルーと縁があるって知らなかったな。女革命家の祖母がいたことも2023/01/18
どんぐり
70
革命家で無政府主義者のフローラ・トリスタン、その孫にあたるポール・ゴーギャンが交互に登場する物語。ゴーギャンの章では、現地民テハアマナをモデルに描いた『マナオ・トゥパパウ』、『我々はどこから来たのか、我々は何者か。我々はどこへ行くのか』『説教のあとの幻影』『ヒヴァ・オアの呪術師』の絵画像を見ながら読み終えた。狂ったオランダ人画家との共同生活からタヒチで梅毒に蝕まれていく姿は、原始社会のユートピアを求めながらも文明病に朽ち果てていくものの儚さを感じた。2014/09/23