内容説明
未発表・未収録作品をはじめ日記、対談・座談にいたる全作品を収録。
目次
胡桃の中の世界(石の夢;プラトン立体;螺旋について;『ポリュフィルス狂恋夢』;幾何学とエロス ほか)
貝殻と頭蓋骨(ビザンティンの薄明―あるいはギャスターヴ・モローの偏執;キリコ、反近代主義の亡霊;幻想美術とは何か ほか)
幻想の肖像(シモネッタ・ヴェスプッチの肖像―ピエロ・ディ・コシモ;若い女の肖像―ペトルス・クリストゥス;二人の娼婦―ヴィットーレ・カルパッチオ ほか)
補遺 一九七四‐七五年(タロスの花―川井昭一展;エロティックな函―土井典子人形展;わたし自身へのラブレター ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
梟をめぐる読書
11
七〇年代以降の澁澤龍彦のイメージを決定付けた『胡桃の中の世界』を収めた貴重な巻。ちょうど十年前に書かれた『夢の宇宙誌』の路線を継承するものでありながら、正多面体、螺旋、宇宙卵、庭園といった多種多様なイメージ(その根底にあるのは「世界を雛形によって所有せん」とする権力者の夢だろう)の系譜学として、あるいは作者の幼年時代の体験まで交えた元型的なイメージの探求として、作家的な円熟によるテーマの幅の拡がりは見て明らか。そしてどうやら澁澤自身も、本書の手応えから積極的に以後の自己像を構築していったものと思しい。2013/07/15
紀梨香
2
「胡桃の中の世界」「幻想の肖像」学生の頃、読み耽ったのを思い出しました。美術館展では澁澤本に登場した作品が展示されていると他の作品の3倍くらいはじっくり眺めてしまいます。2014/10/25
季奈
0
庭園、幾何学、時計といった、何とも澁澤らしいミクロコスモスを創る『胡桃の中の世界』は、ハムレットの「たとえ胡桃の中に閉じ込められていようとも、無限の天地を領する王者のつもりになれる」から名付けられている。 彼は自らの内に閉じこもることによって、自らを再発見しようとしたのかもしれない。 また、三島とのこっくりさんや、唐十郎が勘違いをした話など、微笑ましくも含蓄のあるエピソードも面白い。2021/04/13