内容説明
物理学の革命を哲学の側から読み解く。力学的世界像から、場の理論的世界像への変革をもたらした相対性理論を、認識論的に解明し、主著『シンボル形式の哲学』にいたる道を開いた、カッシーラーの古典的名著。
目次
第1章 計量概念と事物概念
第2章 相対性理論の経験的基礎と概念的基礎
第3章 哲学的真理概念と相対性理論
第4章 物質・エーテル・空間
第5章 批判的観念論の空間・時間概念と相対性理論
第6章 ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学
第7章 相対性理論と実在の問題
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
6
ニュートン力学とユークリッド幾何学を物理学領域で批判し刷新した相対性理論を、著者は、前2者の古典的時空を前提としたカント哲学の刷新という哲学領域での課題を念頭にして読む。時間と空間が区別のない世界を構築した相対論から見て、両者を区別した古典的世界観のままの哲学で議論すべきは、両者を別と見なす前提となる対象の静止した空間概念である。本書は、エーテルなる物質が満ちる宇宙を特殊相対論と非ユークリッド幾何学が論駁する過程を詳細に追う。この新たな時空の哲学への組み込みという課題から『シンボル形式の哲学』が生まれる。2019/04/23
T.Y.
1
原書にて。相対性理論はあくまで物理学理論であり、哲学的帰結を導くものではないと同時に、時空間の伸び縮みや非ユークリッド時空を主張するこの理論は決して「認識のアプリオリな形式としての空間と時間」というカント哲学の考えに対立するものではないことを主張する。相対性理論の数式は数箇所で、基本はあくまで認識論の議論。諸学における認識の形式の違いとその相対性を論じた最終章は『シンボル形式の哲学』に繋がるものをも感じさせる。2014/04/12