出版社内容情報
Uターン・Iターンといった人の移動と、地域文化に生きる人びとの姿から、日本の「地方」の現在を活写。未来への手がかりを見出す。
【著者紹介】
1955年、東京都生まれ。オックスフォード大学教授。専攻は教育社会学、比較社会学、現代日本社会論。『階層化日本と教育危機』『大衆教育社会のゆくえ』『教育の世紀』『知的複眼思考法』など。
内容説明
文化が人と人とをつなぎ、「地元」の可能性をたぐり寄せる―。Uターン、Iターン、そしてSターン…人の移動のありようと、地域文化に生きる人びとの姿から、日本の地方の現在を活写。分野を超えて集った書き手たちが、フィールドワークとデータ分析をふまえながら、これからのこの国のかたちを展望する。
目次
第1章 それぞれの地元の唯一の解
第2章 ほどほどの隣人、ほどほどの他人―「Sターン」の時代に
第3章 地域文化2・0―海外からのまなざし、海外とのつながり
第4章 風の女神たち―度胸と愛嬌の女性リーダーたち
第5章 アートなプロジェクトたちの妄想力
第6章 アンチ東京化―市場経済のなかの地域文化
第7章 全国調査データでみる地域文化活動の「平均像」
第8章 参加のパラドクスと地域社会のゆくえ
著者等紹介
苅谷剛彦[カリヤタケヒコ]
オックスフォード大学教授(現代日本社会論・教育社会学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きいち
27
遠野、沖縄、壮瞥など5つの文化活動を、社会学や経済学など専門を異にする8人の研究者がフィールドワークした研究報告。でも抽象的な概念を導き出すのではなく、「それぞれの地元ならではの唯一の解」を味わいつつ、引いた目で活動の発生やその効果をおさえていく。研究会楽しかったろうな。◇活動の成功を生む力として地域の人々がもともと持つ地縁の力に注目するのが印象的。芽吹いた活動を育てる「水の人」。◇人の出入りがなく停滞した地域社会に「小さな地雷」を踏む人が入ると一気に活力が生まれる、そんな例は僕もよく見てきてよくわかる。2015/01/26
壱萬弐仟縁
20
吉川教授によると、地元には地方の周縁性、地縁性、根源性が込められているからこそ、情緒性をまとい、文化が沸き立つという(15頁)。地元学の水俣病からの教訓も、地域で起きていることを調べることそのものに意義を感じる。玄田教授によると、Sターン(Short or Small Turn)で、ほどほどの隣人、他人の人間関係を描写している(60頁)。複数の研究者で飯田人形フェスタや、遠野物語ファンタジーを取り上げている。熊倉教授によると、文化は社会の背骨である。その骨密度が下がると、社会は活力を失う(143頁)。 2014/11/20
とっぴぃ
3
一言地域活性化と言えども、そのローカル・トラックに応じた盛り上げ方がある。ということを実感できるケーススタディ。いろんな切り口で地域活性化の事例を検証できるのは編著の強み。こんな形での研究(フィールドワークを共にし、共に書籍化する)、仲間とできたらおもろいやろなぁ。2014/11/02
sapporokobe1971
2
各地の地域で特色ある文化活動を様々な視点でとらえて紹介している。全部に共通するのは、当たり前だけど情熱を持ったコアな人が存在すること。こういう活動は活動する人の満足感は高い。なにか新たな活動を始める努力をするのではなく、コアな人がたくさん輩出されるような地域の仕組みってできないだろうか。2015/01/02
Humbaba
2
地元に戻るというのは、確かに優良な選択肢の一つである。誰にとってもそれが最適な決断ということにはならないだろうが、それによって幸福になれるという人も存在する。一度外の世界を体験し、自分たちの文化とは違うものを身につけた上で地元に戻ることで、更に新しいものを感じられるようになるだろう。2014/11/22