河出ブックス
貧者の領域―誰が排除されているのか

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  • サイズ B6判/ページ数 220p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784309624136
  • NDC分類 368.2
  • Cコード C0336

出版社内容情報

貧困の現実は本当に語られているのだろうか。貧者の存在をないものとしてやりすごさせる排除と隠蔽のメカニズムを暴き出し、他者と自己とが共有する「社会」への想像力を培う道を模索する。

内容説明

社会問題として論じられるようにはなったものの、貧困の現実はいまだ十分に可視化されてはいない。むしろ何も変わっていないのではないか…。貧者を取り囲む、「檻のない牢獄」とも言うべき世界は、われわれに鋭利な問いを突きつける―生かすのか殺すのか、と。その声を受け止めうる「社会」はいかにして可能なのか。貧者の存在をないものとしてやりすごさせる排除と隠蔽のメカニズムを暴き出し、他者と自己とが共有する「社会」という拡がりへの想像力を培う道を模索する。

目次

1章 排除による貧困(貧困問題の発生;貧困を論じるために;社会的排除;国家と社会;貧者の場所)
2章 檻のない牢獄―野宿者の社会的世界(檻のない牢獄;排除の地理学;ホームの空間・ホームレスの空間;距離の思想;野宿者の社会的世界;過去への投錨;生の露呈―抗いと抵抗)
3章 「非国民的なもの」の排除―東京の都市下層(国民化と排除;隠蔽のメカニズム)
4章 「都市的なもの」と「社会的なもの」(都市的なもの;思想としてのアーバニズム;都市下層の再編;都市下層の存在形態;福祉国家と隠蔽;野宿者;「国民」の変容と排除)
5章 「社会」の再構築へ

著者等紹介

西澤晃彦[ニシザワアキヒコ]
1963年、京都府生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程中退。現在、東洋大学社会学部教授(都市社会学、階級・階層構造論)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

いまにえる

3
社会的排除についての本。読みやすかった。「長きにわたって政府が貧困を隠蔽することができたのは、貧困を個人的欠陥の帰結とみなす多数派の意識と、そして、貧困を否認して生じた多数派の無意識と共鳴していたからである。」というように自己責任論は政府にとって都合が良いのだろう。「定住」ということが国民か「非国民」かを隔てるほどの威力を持ちうるのは重要だと思う。また、貧困が悪であり、悪であるから貧しいという循環論法は現在でも多く用いられているように思う。ネオリベラリズムの帰結というべきか。2018/03/26

まつゆう

2
この筆者は一貫して都市下層を排除して隠蔽していく力学についての記述をしており、そうした研究の論集のような体裁。排除の暴力を描くことでの市民意識への批判を喚起する点は素晴らしいと思うが、ホームレスの姿から抵抗の潜勢力を見出すにも、アサイラム的状況でのアイデンティティの構築にせよ、ホームレスを受動的に見過ぎという気も。2014/08/17

香渓

2
ホームレスの話の部分が辛い。本当に辛い。この辺りから社会的排除に興味があることに気づかされた。

readtuktuk

0
以下、本書よりメモ。〈野宿者は、都市のマジョリティからは隔絶されて、固有の空間を生きている。組織・定住社会、「よき国民の領域、は、履歴の空白、「不定」な住所、保証人の欠如などを標識として野宿者を拒絶し、社会的に排除する。また、定住家族を基準化した社会福祉行政は、野宿者を生活保護制度の対象から事実上除外し、制度的に排除してきた。野宿者は、組織・定住社会に再参入するとっかかりを与えられないまま、積極的に放置されているのである。2010/03/16

うきょう

0
主観を限りなく排除して、社会現象としての"貧困"に真摯に向き合っている印象。調査の間、目を背けたくなるような事例を見聞きしたと思うけど、理路整然とした文章が続いてるところはさすが研究者。理論の部分は自分の理解が甘いと思うので再読したい。2019/02/04

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