出版社内容情報
空前の脳科学ブーム。そのわかりやすさに潜む危うさとは? 第一線の研究者が批判的に検証。研究現場の現状もフェアに見つめながら、いま求められる科学と社会の関係を問う。
内容説明
「脳科学者」の活躍や脳画像技術の進歩もあって、急速に一般社会に浸透した「脳科学」。医療、教育、司法、マーケティングなどさまざまな分野で研究成果の応用を期待されてもいるが、その過熱ぶりに危うさはないのか―。第一線の研究者が脳科学ブームを批判的に検証。研究現場の現状もフェアに見つめながら、いま求められる科学と社会の関係を問う。
目次
はじめに メジャー化した脳科学
第1章 脳科学ブームの立役者
第2章 未来技術としての読脳術
第3章 リアリティーのある研究成果
第4章 脳科学のレトリック
第5章 研究者のダークサイド
第6章 ちいさなマニフェスト
著者等紹介
坂井克之[サカイカツユキ]
1965年、兵庫県生まれ。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了後、ロンドン大学神経学研究所リサーチフェローを経て、東京大学大学院医学系研究科准教授(認知神経科学)。医学博士。ヒトの心の働きの脳内メカニズムを脳画像を用いて研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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樋口佳之
11
これは「脳」という物質を実験対象としていながら、その目的は「心」という捉えどころのないものの成り立ちを明らかにするという、科学としてかなり無理な設定に伴う必然的な帰結/あるいは「心」を目的とすることで避けては通れなくなった要素還元の到達レベルの限界2017/02/19
加藤久和
7
真面目な脳研究者が脳科学ブームをやんわりと批判する。脳トレ、脳年齢、脳活、アハ体験などテレビや本でよく目にする言葉なのだが、それらがどこまで科学的な根拠に基づいているのかというと、すべてではないにしても科学的根拠は限りなく薄いということなのだ。脳科学ブームが始まった時には逆に日本の脳研究は冬の時代だったと著者は言う。マスコミを巻き込んでブームを起こさないと研究費を獲得できないという科学界の大人の事情。私達一般人としては脳科学ブームに煽られて貴重な時間とお金を無駄にしないようにしたいものだ。2017/02/18
kokada_jnet
5
メディアで持てはやされている「ずさんな脳科学」を批判しながらも、脳研究が社会とつながる際には、どうしてもあのような「すぐ役にたつ」というアピールをせざるを得ないことを考察。また、著者自身の研究分野であり、近年流行の「MRIによる脳画像研究」の危うさについて、真摯に検討している。2009/11/27
春風
3
「脳科学」ブームを批判するだけでなく、科学の現場の現実を問題点とともに伝える良心的な本。良書。2009/12/20
いちはじめ
3
脳科学のみならず、科学全般のあり方について考えさせられる。2009/11/26