感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
94
夏の終わりの風景の中で少年たちの揺れ動く心が生々しかったです。一夏の情景はとても物悲しさを感じました。清涼感あふれる季節ながら、登場人物たちの抱える想いが切ないです。夏から秋へと移ろうとする季節だからこその空気が影響を及ぼしているのでしょうか。鮮やかなようで曖昧な色彩を放つ独特の雰囲気が美しかったです。2016/08/08
青蓮
48
数年ぶりに再読。読み返してて、どうやら私は別の話と混同していたようで、こんな話だっけ?と思ってしまいました。兄の幻影を追う千波矢と岬の空家に引っ越してきた葵達の一夏の情景を描いた作品。結末がとても悲しい。千波矢は「あおい」から帽子を受け取ることができたのだろうか。青すぎる海から汐の香りと濤声が聞こえてきそうな、切ない作品でした。2015/02/12
カナン
45
飴細工のように繊細で甘露のように濃厚な言葉で綴られる、茹だる夏の暑さにとろけて輪郭を崩していく少年少女達の物語。二度と戻らない、そして自分がその時にいる間は決して気付く事のできない、稚いほんの僅かな瞬間を切り取った作品。柔くて脆くて、瑞々しい若葉の年頃の子だけが持つ、幼い愚かさや浅はかさ。夏の名残りのように気付けば失われしまっている澄み切って透明な喜怒哀楽。湿度の高い憂鬱なだけの季節が刹那、気怠く憂いを帯びた芳醇な甘い匂いを放つ。読み終えた後は誰かの走馬灯とすれ違ったかのような寂寥感だけが胸底に残ります。2017/05/14
紅香@新刊購入まで積読消化あと4冊⭐︎
33
切り立った崖。岬の家。ぼんやりとした兄の記憶。。夏になると海を感じる。ここには汐の香りなどとうてい届きもしないのに。海をどうしようもなく感じてしまう。脱皮したくなるようなむず痒さを毎朝感じ、昼は暑さに溶け、空虚な気持ちで夜を迎える。空の青さに凛とした気持ちと訳の分からない切なさの狭間。夏の終わり。きまって何かをさらわれる。波の音はどんな隙間にも入り込み執拗に追いかけて容赦しない。波打ち際に打ち上げられたそれはあの頃の夏休み。いつ届くか分からない忘れ物。何かをもぎ取ってまた退いていく。切なく美しい夏の物語。2014/08/23
yourin♪
19
久しぶりの長野さん。 文章とか雰囲気とかストーリーとか、スキだなぁ~と思う。 胸がしめつけられるような気持ちになる。 でも、少年少女だった頃の感性がすっかり失われてしまったからか、いやきっとこういう感性はもとから持ち合わせてなかったんだろう・・・みんなが何を感じて考えてて、その行動の理由はなんなのか、さっぱりわかんない。 スキなのに理解できない、これは辛いことですぞ。2014/02/03