内容説明
水路の奥には兄さんの秘密の隠れ処がある。単行本化されなかった幻の初期作品が甦るデビュー10周年企画。書下し装画、詩篇に加え見返しには自筆生原稿も。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あき
18
★★★☆ 古木である銀木犀がいつまでも老いない秘密とは……。泥や雨に濡れた重くだるい空気の中で行われる、銀木犀の怪しく美しい狩りの様子。寄生虫に意識と体を支配され、寄生者の養分となるためにふらふらと自ら危険な舞台に上がろうとする宿主を思い起こさせます。二編のうち「カンパネルラ」はあまりハマらないかな、と思ったのですが「銀木犀」にやられました。銀木犀の文庫本があるようなので、欲しいです。ひたすらキラキラとして澄み切った長野まゆみさんの小説も好きなのですが、こういう陰鬱で毒のある小説もクセになります。2017/07/20
響
15
『カンパネルラ』『銀木犀』の二篇収録。どちらも結末が曖昧で藪の中のような、リドルストーリーにも似た終わり方をしていた。捉え方によっては幸せな終わり方にも、不幸な終わり方にも読解できる。2013/03/19
さく
8
梅雨の時期にはいつも「銀木犀」を読みたくなります。じめっとした雰囲気がとても好きです。〈カンパネルラ〉柊一はなぜかいつも兄の顔を思い出せない。絵から漂う銀木犀の香り。あれは兄なのか、それともカンパネルラか。〈銀木犀〉泥に沈んでいった雛鳥。喉の渇きを潤すため林檎を食べる燈水の姿が、柘榴を食べる月彦に重なる。「死んだ鳥の躰の中にある卵を食べるとね、ずっと少年のまゝでいられるんだよ」2015/06/27
あおさわ
8
萩尾望都先生の短編と空気が似てるなと思いました。明るいのどかなはずの風景の影の底知れない暗さ。なんでこうなったとか聞くのはマナー違反な気がします。2011/06/27
barcarola
5
タイトルに惹かれて手に取ったのだが、はっきり言って難しい。掴みどころがないとはこのことか。2023/08/04