感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tatsuhiko
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19世紀から20世紀ごろにかけてのエジプトを舞台にした小説。アラブ文学を読むのは初めてだったので構えて取り掛かったが、じっさい日本のみならず普遍的なテーマを扱っていると思った。近代的な価値観と伝統的な社会が接触することで新たな幸と不幸とに人間はさいなまれることになる。高史明さんの解説が秀逸で、「不幸の樹」はマクロ的には近代社会の侵入を指すのだが、ミクロな個人レベルでは醜い女性を指すよう目くらましがなされている。作中でこれを指弾する女性の訴えがあり、そのパートがこの小説のハイライトだと思う。2016/10/10