感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猫丸
10
江戸文芸に通じた才人による言語芸術。お座敷で官能芝居を見せる密室芸人とその客の話。彼らのセリフ回しが再び芝居を成立させる二重構造になっている。粋と野暮が交錯し、切った張ったにまで発展する非日常的日常において、ついに「社会」は表れない。近代的問題意識に苦悩するフリをしてみても、他人から借りてきた問題などくだらないのだ。山口椿の作品には読む者を裸にする力がある。建前を飾ったところで「ハァ、なるほど。そうでございますか。で、それで?」と問い直される気分になる。ここんトコ、露悪趣味と誤解してはダメよ。2023/10/17