内容説明
シェイクスピアを狂わせた「黒の女」。恋人に父を殺害させた伝説のベアトリーチェ。時は変わっても、存在するだけで男の生を翻弄する「運命の女たち」の物語は尽きない。本書では、イェイツと革命家モード、ロレンスと「チャタレー夫人」のモデルとなった妻フリーダ、ミラーと妻ジューン、愛人アナイスほか、作家と女たちの陶酔と狂気の迷宮を探る。亀井勝一郎賞受賞。
目次
1 破滅のベアトリーチェ―ある美しい娘の肖像
2 ベアトリーチェの肖像の謎―「アメリカ」のイヴ=森の女
3 続・ベアトリーチェの肖像の謎―「アメリカ」のイヴ=海の女
4 炎と石の女―モード・ゴン
5 罪なきイヴ―フリーダ・ロレンス
6 「ブラック・ホール」の女―ジューン・ミラー
7 日記の女―アナイス・ニン
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
安南
37
グィード描くベアトリーチェの肖像に魅せられた作家は数知れない。ディケンズからスタンダール、シェリー。中でも『大理石の牧神』を書いたホーソン、『ピエール』を書いたメルヴィルにとってはまさにベアトリーチェは《運命の女》であった。イェイツと女革命家モード、ロレンスと『チャタレー夫人』モデルのフリーダ、ミラーと妻ジューン、そしてアナイス ニン。チェンチ一族の悲劇を手がかりにシェイクスピアの『黒の女』とウロボロスをキーワードに読み解く《ファムファタール》文学論。満足満腹。2015/10/02
傘緑
12
「その瞳は太陽に似ず…」シェイクスピアのソネットに刻み込まれた愛と憎しみの象徴である<黒の女>、「彼女の血統が絶える気づかいもなかった。<黒の女>はその姿をさまざまに変えて、脈々と生きつづける…主題と変奏」。その遺産の、原型の一つの悲劇、”破滅を奏でる宿命の女・ベアトリーチェ”、「ベアトリーチェ・チェンチはその美しさゆえに、人々を堕地獄に導き、破滅をもたらす…まぎれもなく、もう一人の<黒の女>に違いなかった」。あとがきに文庫化に際しシェイクスピアとE・ブロンテの章を削ったとのこと、そこが読みたかったのに…2016/11/15