感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
29
明治・大正・昭和、とあるけれど、話は幕末から。海外に留学した武士たちが、たちまちビールを好きになったいきさつが楽しい。今、意外に思えるのは、高度成長の時代まで、一貫してビールは高級品だったということ。普及したとは言っても、ビールをめぐるエピソードは、比較的裕福な人々に限られている。原著から30年。この文庫は平成になる前年の刊行なので、「第3のビール」など影も形もないから、その後のビール史につけ加えなければならないことは数多いだろう。文庫化時に収録した書評の言うとおり、これはビールからみた文明論でもある。2015/08/08
韓信
2
一番搾りを飲みながら読了。キリンビール編纂の日本ビール受容史。幕末の欧米への使節・留学生ら武士からはじまり、軍人・役人など公職者から一般の家庭へ、都市から地方へと普及する過程や、工場・鉄道・軍隊・サラリーマン階級の誕生などと軌を一にして発展する日本のビールはまさに近代化の象徴。意外なのは、日本で当初受容されていた濃くて苦い英国式のエールが、キリンなどの淡麗で飲みやすいドイツ式ピルスナー人気で淘汰されて今に至るという歴史。現在ではクラフトビールブームでエール人気も高まっており、ビール文化の最盛期ではないか。2020/04/29
ふら〜
2
キリンビール編ということで、ビールの販促を目的としたくだけた感じの読み物だろうなぁと思っていたが、全くそんなことはなく、ビールが日本人にどのように愛され風俗として定着していったかを当時の新聞・広告や日記資料等紐解いて詳説。戦時中も配給の対象だったとか、驚くようなこともたくさん出てきて面白い。思い付きだけど、大正から昭和にかけて「嗜好品の両横綱」と謳われたというビールと煙草がなぜ今差がついているのか気になるので、「タバコと日本人」という切り口で誰か考察してくれないかなぁと思ったり。しかも煙草は専売公社だし。2017/04/04