出版社内容情報
1979年、台北。中華商場の魔術師に魅せられた子どもたち。現実と幻想、過去と未来が溶けあう、どこか懐かしい極上の物語。
内容説明
懐かしい記憶には魔法がかかっている。一九八〇年前後の台北・中華商場を舞台に、少年少女が繰り広げる不思議な物語。踊りだす黒い小人、女子トイレの九十九階のエレベーターボタン、死にゆく小鳥に起きた出来事、若者たちの恋…。ジャンプブーツを履いた魔術師が生みだすさまざまな奇跡。単行本未収録短編を収録。
著者等紹介
呉明益[ウーミンイー]
1971年、台北生まれ。現代台湾を代表する作家・エッセイスト。国立東華大学教授。97年『本日公休』でデビュー。幅広いジャンルで創作を続ける
天野健太郎[アマノケンタロウ]
1971年生まれ。翻訳家・俳人。台湾文学・文化を積極的に紹介。2018年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
82
不思議な世界観を味わいたい人やアジア文学に興味がある人におすすめの本になっている!今年何故かハマっているアジア文学。その中でも面白さと没入感が心地よがかった!台湾の市場に住んでいた人の過去の回想録。どれもが短編になっているため独立はしている。でも共通点がある。それは歩道橋にいた魔術師である。普段はマジック道具を売ったりしているが、子どもたちに稀に見せるマジックはほぼ魔術の類である。文学とは一種の魔術であり私達読者がその魔術にかけられてどこか遠くの世界に行ける。そんな感覚を味わえる作品になっている!2023/03/29
カフカ
67
1980年前後の台北・中華商場に住む子供たちを主人公に描いた、幻想的でノスタルジックな連作短篇集。ほぼ全ての短篇に“歩道橋の魔術師”なる、歩道橋の上で商売をする魔術師が出てくる。ただの手品師のような風貌なのだが、時折本物の魔術のようなものを用いる謎に包まれた人物。彼を物語に織り交ぜて、少年少女たちに不思議な体験が起こる。そこには、魔術によって生き返る命も、生き返らない命もある。幻想の中にあっても、生きるということは残酷なことだ。薄靄に包まれたような哀愁を心に残す物語だった。2023/04/14
Sam
56
かつて台北に実在した「中華商場」。3階建ての建物8棟が1キロに渡って連なるという巨大な商場(兼住居)であったらしい(表紙カバーを見るとよく分かる)。本作はかつてそこで子ども時代を過ごした人々が織りなす連作短編集。ノスタルジックな語り口ではあるが、それぞれが直面する死や喪失感が巧みに描かれ物語に深みを与えている。そして毎話登場する「歩道橋の魔術師」は、エピグラフのガルシア・マルケスのように作品に「マジック・リアリズム」の魔法をかけている!(ちょっと大袈裟だけど)2021/11/21
ちえ
38
単行本で読んだ後に文庫が出て間もなく購入し本棚に。こんななら北海道も台湾に少しは近いんじゃないかな、と思うじっとり暑い日、2日かけて読んだ。1970-80年、ほんの少し前の台湾台北市中華商場。この世と並行世界、死が生のすぐ裏側にあるその世界。中華商場はもう壊されているけれどアカが作った模型の中にそのままあるんだな。入り込みそう。単行本で読んだ時には自分の子どもの頃も思い出に重ねていた部分があったけれど、今回、魔術師や登場人物たち、中華商場、どれも頭の中に浮かぶようにリアルに感じながら読んだ。 2023/07/09
まめこ
37
★★★★★よかったー!ノルタルジックでビターな味わいを残す表題。しかし2作目以降、いつの間にか腹の底に沈殿していた死に現実を乱される。魔術師の見せる真実でない真実の世界を私も…〈世界はこんなに美しい。でもあの頃は知らなかった、世界はこんなに悲しいことを〉解説で納得マジックリアリズムか!中華商場を走り回っていたあの頃の僕たち。「九十九階」「ギター弾きの恋」「唐さんの仕立屋」どれもよかった。2022/04/02