出版社内容情報
Y染色体遺伝子の生存戦略が、世界の歴史を動かしてきた。地球生命の進化史を再検証し、戦争や暴力の背景を解明。衝撃の未来予測へ!
内容説明
父系でのみ受け継がれるY染色体遺伝子の生存戦略が、世界の歴史を動かしてきた。二つの性の誕生、進化における性の役割、男性間あるいは男女間の遺伝子存続を懸けた戦い…。地球生命の進化史を再検証することで、人類の戦争や暴力の背景にある「アダムの呪い」が次第に浮かびあがる。そして、その果てには「男性のいない世界」が待ち受けるという、衝撃の未来予測まで語る!
目次
サイクス家の起源
孤独の染色体
生命のリボン
最後の抱擁
性と性染色体
男性が誕生するまで
魚に教わる性のヒント
性は必要?
理想的な共和国
性の解釈
性別
ふたつの戦線
必死の説得工作
世界の男たち
ヴァイキングの血
武将サマーレッドのY染色体
偉大なるチンギス・ハーン
古い学校名簿
トレーシー・ルイスの十一人の娘たち
罪なき者の虐殺
暴君の台頭
“イヴの七人の娘たち”一族の精子
同性愛遺伝子
ガイアの復習
呪いを解き放つ
著者等紹介
サイクス,ブライアン[サイクス,ブライアン] [Sykes,Bryan]
オックスフォード大学名誉教授。人類遺伝学の国際的権威。古代人骨からのDNA採取の成功や、ミトコンドリアDNA解析による人類の系図の解明などで知られる
大野晶子[オオノアキコ]
翻訳家。英米文学の翻訳も多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mob
7
Y遺伝子が弱る構造と未来像が衝撃的で興味深い。ただし歴史観の偏りを感じる。一握りの支配者でなく多くの遺伝子を運んだ民衆に着目する歴史観なら、体格が近いため貢がせる立場で女性による性選択が富の獲得で加速した結果、社会的弱者のY染色体が多く切り捨てられたにすぎない。単純に富の獲得前の性選択に戻すことが「平等」と考えるのはあまりに無防備か、フェミニズムに毒されすぎだろう。同性愛男性を働きバチに喩えたのはひどいが、野太い声で女性的主張(男の好み)を代弁させられる日本のメディアでのゲイ風タレントの用途を思い出した 2021/09/05
ふたば@気合いは、心を込めて準備中
6
母系をたどるミトコンドリアDNAに対して、父系をたどるY染色体。男性にのみ引き継がれていくこの染色体が人類の発祥(それより以前から?)からの足取りを追い、生殖に関する事、性別が存在する意味や、遺伝病についてなど多岐にわたる内容で読みごたえはあった。もっとも、21章にすっかり持って行かれて、しばしそれ以前の内容が飛んでしまったが。。。 繁殖に必ずしも雌雄が必要なわけではなく、現在Y染色体は傷つき、男性の生殖能力は低下の一途をたどっているのだという。。。女性がいれば繁殖できる日も近いというのか。2021/03/22
はなこ
1
アダム(Y染色体)は富を武器に子孫を増やす戦略を取った。同姓の男性が類似のY染色体を持つ例から、遺伝子をたどってゆく。イブは女系の祖先探しのストーリーだったが、今度は男系の物語だ。X染色体Y染色体の組み合わせによる男性らしさ女性らしさの章もためになったが、生物の雌雄決定方法の多様さには驚いた。2021/05/31
みほ
1
Y無くなるな、こりゃ。2021/03/24
sho
1
自分の複製を残すためにせめぎ合うY染色体とミトコンドリアDNAや、Y染色体と文明の歴史が結びついた「アダムの呪い」など、自然選択や性選択という基本原理をもとに展開される内容。なぜ効率の悪い有性生殖でなぜ男女という2種類なのかや、「同性愛遺伝子」という仮設に対するミトコンドリアDNAの働きに関する記載は、科学的な思考をフルに回転させつつ展開される非常に知的な刺激を受ける内容だった。また、遺伝子の組み換えが行われないため、Y染色体が劣化し続ける運命にあるというのは、恐ろしくかつ興味深い議論だった。2020/07/19