出版社内容情報
自由の名の下に闘争が繰り広げられる現代。若者たちは出口のない欲望の迷路に陥っていく。著者の問題意識が凝縮された小説第一作。
内容説明
今一度思い出してみてほしい。あなたが闘争の領域に飛び込んだ時のことを―。「自由」の名の下、経済とセックスの領域で闘争が繰り広げられる現代社会。自意識の強い顧客、列車の女子学生、同僚の馬鹿女、薄着の看護師…。愛を得られぬ若者二人は出口のない迷路に陥っていく。『素粒子』『服従』ほかベストセラー作家、魂の原点。
著者等紹介
ウエルベック,ミシェル[ウエルベック,ミシェル] [Houellebecq,Michel]
1958年フランス生まれ。98年長篇『素粒子』がベストセラーとなり、世界各国で翻訳、映画化される。ほかに『地図と領土』(10、ゴンクール賞)など。現代社会における自由の幻想への痛烈な批判と、欲望と現実の間で引き裂かれる人間の矛盾を真正面から描きつづける現代ヨーロッパを代表する作家
中村佳子[ナカムラヨシコ]
1967年広島生まれ。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buchipanda3
98
著者最初の小説。冒頭から挑発的に明け透けな物言いをするところが著者らしいが、それは根底にある悲観主義から来るこじらせっぷりの反動にも見える。ただ、その苦しい思いを曝け出すことは必要なものとも思えた。語り手は徹底した客観的な観察者となり、彼自身、同僚、そして社会を率直に見据える。自由競争(闘争)と合理主義が強く結束した現代は、価値観を単純化して安易な社会階級システムを構築する。それは経済だけでなく性愛にも及ぶと彼は言う。闘争の果てがもたらした人間の姿とその矛盾。自由と成熟の意味を問われているかのようだった。2024/03/20
やいっち
65
ウエルベックの処女作。次が「素粒子」。最初からウエルベック節炸裂。皮肉屋で世の中を斜に観ている男が主人公(語り手)。だが、彼は実はシニカルなだけの奴じゃない。彼には世の中が人が見えてしまう、感じてしまう、もっと云うと感情移入してしまう。デブの女。恐らく一生、処女だろう女。デブでニキビ面の男。一生、うだつの上がらない奴。女には決して相手にされない。童貞が生まれながらに(物心ついた時には自覚を迫られ)宿命づけられ、実際、最悪の青春時代を過ごし、社会人になって一層、惨めな現実を思い知らされる。(続く)2019/11/05
南雲吾朗
48
「もうそれ以上、ルールの領域では生きられなかった。だから闘争の領域に飛び込んだ。」小説の序盤に登場するこの言葉はウエルベックらしい発想だと思った。この闘争の観念を経済問題にだけではなく、性行動に結び付けて思考するあたりがウエルベックなのだろう…。「性的行動は、ひとつの社会階級システムである」。経済自由主義と性行動の自由化の類似性を語っている。著者の中で、どれほど「性」が重要な要素なのだろう?これはフランス人の性質なのだろうか?終盤で語られる鬱状態の記載はすごく上手いと思われた。2018/02/21
ともっこ
33
ウエルベックらしい皮肉のオンパレードが痛快で、読みやすい。 綺麗ごとではない現実がこれでもかと描かれやはり陰鬱な気分になるが、坦々とした一人称の物語に、ウエルベックの憂鬱、哀愁、憐憫が見え隠れするのが魅力。 著者が自ら言うように、彼の作品は感情の機微の描写を楽しんだり、キャラクターやストーリーを楽しむ種類のものではない。 読後すぐに「面白かった」と手放しに紹介できるものではない。 彼の作品がじわじわ効いてくるのは、これからだと思っている。 今までの作品同様、事あるごとに思い出すことだろう。2022/03/05
Aster
31
ぅ…2021/01/22