出版社内容情報
150年前のロンドンを「見えない敵」が襲った! 大疫病の感染源究明の壮絶な実験を描くスリリングな医学=歴史ノンフィクション。
内容説明
コッホがコレラ菌を発見する三十年前、「疫学の父」と後に呼ばれたジョン・スノーは、ロンドンを襲った「見えない敵」と闘っていた。原因も治療法もわからない恐怖や惨劇のなかで次々と人が死んでいく。ミステリー風でスリルあふれる歴史読み物でありながら、大疫病の感染源を究明するために「ビッグデータ」を彷彿とさせる手法を用いたことに現代性を感じさせる名著。
目次
八月二十八日 月曜日―下肥屋
九月二日 土曜日―目はくぼみ、唇は濃い青色に
九月三日 日曜日―探偵、現る
九月四日 月曜日―肥大化する怪物都市
九月五日 火曜日―あらゆる「におい」は病気である
九月六日 水曜日―証拠固め
九月八日 金曜日―井戸を閉鎖せよ
その後~現在―感染地図
エピローグ
著者等紹介
ジョンソン,スティーヴン[ジョンソン,スティーヴン] [Johnson,Steven]
「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」「ディスカヴァー」など多数の雑誌に寄稿する人気コラムニスト。サイエンス、ポップカルチャーなど専門は多岐にわたる
矢野真千子[ヤノマチコ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
137
分かりやすく読みやすく、内容が濃い良書。1854年のソーホー(貧民窟)での突然の大量死を調べる階級差を乗り越えて医者になったスノーと地元を歩き回る牧師。彼らがその原因は汚物の瘴気ではなく水の中にあるとした。後にそれはコレラ菌とわかる。スノーが死者の数を記した地図の遺産で、今は集められたデータは各機関がウェブサイトにアップしている。エピローグ後半で懸念されている新興感染症への懸念が現実になったのが、今の世界だと震え上がった。コメント欄には、本著の中から覚えておきたいことを記憶のために。2020/03/25
ケイ
126
読書会準備のための関連本として再読。1854年にコレラの死者が出たブロード・ストリートは、ソーホーエリア。1665年、ロンドン大ペストの時、クレイブン伯爵が貧者のために共同住宅と共同墓地を作った土地。最終的に4000人の人が投げ込まれた。その200年後、毎週何十人と亡くなっていく 。コレラ菌を顕微鏡で見つけられずも、感染者の居住区、生活パターンを地図を用いて調べ歩き、原因は水にあると判断したジョン・スノウ。公衆衛生学、疫学の父。統計を分析に用いた黎明期。当時も責任のない人は好きなことを言っていたようだ。2020/04/19
あきぽん
73
本屋に積んであって気になり買った本。難しかったけど面白かった。19世紀半ばのロンドンで蔓延したコレラの収束のため、常識を覆すべく「探偵」する、無口な麻酔科医とコミュ力抜群の副司祭。2006年刊だけどエピローグでこれまたコロナ禍の予言めいたことが書かれている。2020/04/27
てつ
52
この時期に読んだのはたまたまに近い。日本で言えば幕末の時期に、コレラについてなにも分かっておらず、なおかつ、大都市ロンドンの衛生状況がものすごくひどいものであったことに驚愕。カミュやデフォーのペストもいいがおすすめです。2020/04/24
ぱなま(さなぎ)
25
人間の思考は思い込みや感情でいとも簡単に曇らされてしまう。大抵のミスはその理由を知識として持っていれば防げるように思えるが、我々が感情に流されて大小関わらず過ちを繰り返してしまうのは、一人の生涯においても歴史の流れの中においても変わらないようだ。ただ、一つずつの事実のみを冷静に見極める努力の実行もまた人類の功績だったと、この本は教えてくれる。それから、科学技術の進歩と文化的豊穣さに加速されてますます巨大化する都市生活の危険と魅力についても。疫学史ノンフィクションとしてのみでなく読み物としても楽しめる一冊。2018/09/15