出版社内容情報
モルモン教原理主義を通して、人間の普遍的感情である信仰の問題をドラマチックに描く、渾身のノンフィクション! 解説=桐野夏生。
【著者紹介】
1954年生まれ。登山家、ジャーナリスト。多方面にわたって執筆活動を続ける。著書に 「荒野へ」(集英社)「空へ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか」(文春文庫)など多数。
内容説明
弟の妻とその幼い娘を殺害したラファティ兄弟は、熱心なモルモン教信徒であった。著者はひとつの殺人事件を通して、その背景であるモルモン教とアメリカ社会の歴史を、綿密かつドラマチックにひもといてゆく。人間の普遍的感情である信仰、さらには真理や正義の問題を次々突きつけてくる刺激的傑作。
目次
第3部(退去;水では役に立ちそうもないから;スケープゴート;神の御旗のもとに)
第4部(福音主義;リーノ;プロヴォの裁判;大いなる恐ろしい日;アメリカの宗教;ケイナン山)
著者等紹介
クラカワー,ジョン[クラカワー,ジョン] [Krakauer,Jon]
1954年生まれ。ジャーナリスト、登山家、作家。寡作ながら徹底的な取材に基づいた迫真のノンフィクション作品を発表しつづける
佐宗鈴夫[サソウスズオ]
静岡県生まれ。翻訳家。早稲田大学文学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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絹恵
38
これもある意味では人間の虐殺器官を用いたやり方で、感覚器官が犠牲になるのだと思います。信じるか、信じないか、という普遍的な問いだからこそ、誰もが心の闇を見ます。神/奇跡に従ったと言うそれは何よりもアイデンティティーを表しているとも言えるし、分裂と盲信を繰り返しているとも言えます。この社会が正しさを明示することが出来ないゆえに。2015/03/15
春風
8
女性を虐待する一夫多妻コミュニティが、今も普通にアメリカに存在するというのは衝撃的。モルモン教原理主義者による殺人と、かつてはカルト教団そのものだったモルモン教の闇の歴史をたどった本。たいへん濃密。2014/08/07
芋煮うどん
4
信じる、ということは、何か。真摯に迫っていく。 モルモン教、よく知らなかったのでそれを知る意味でも良書。 神様はどこにいらっしゃるかわからないけれど、見えない大きな力を感じることはだれでもあるはず。 それを突き詰めたり、突き放したり、何かの拍子で大きな凶器になる悲惨さ。怖さ。他人事ではすまされない。2017/04/17
オラヒラオ
4
下巻も読破。裁判の場面における被告の精神状態を巡ってのやりとりが白眉でした。2014/10/28
パンダ女
2
人間は弱いので、いつ誰が、自分だって宗教に熱狂的になる可能性は十分にある。故に誰でも罪を犯してしまう可能性は高い。日本ではオウムの事件があったので、それと被った。大多数の人間からしたら殺人は大罪だが、彼らは本気で世のためになると信じていた。私自身、耐えられないほどの悲しみに見舞われたとき宗教を拠り所にしてしまう可能性は大。最後に宗教を棄てた男性が語っていたことが印象的だ。宗教はあらゆることに答えをくれる、宗教が全責任を負う。それで人は幸せを感じる。けれど幸せより大事なのは自分で自由に考えることだ。2019/12/01