内容説明
サドの代表的著作、ジュリエットの物語『悪徳の栄え』と対をなす妹ジュスティーヌの物語には三つのバージョンが残存している。本書はその最初の版である「原ジュスティーヌ」とでも称すべき中篇である。バスティーユ牢獄中にて書かれ、革命のどさくさに粉れて紛失され、100年ののちに陽の目をみた本書はサドの思索のエッセンスが凝縮された異色作である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
里愛乍
29
「正しさ」とは時代、立場、風習慣習その他事情に寄って左右される。だけど「真・善・美」は揺るがないとの説を識ったとき、妙に自分の中で腑に落ちた事がありました。ジュスティーヌ彼女の場合は「正当防衛」ですら「悪」の「行為」を拒んでいる。「美徳」とは己を殺してでも守るべきものなのか…いやむしろ殺される方を選んでいるような。「すすんで自分の好きなことをしたまでの話だろう?」まさにその通りなのである。彼女には幾通りもの生き方があった。そして最期まで貫き通した。まことの幸福は美徳のうちにしかないことを。2018/08/05
夜間飛行
27
「森の修道院サント・マリー」の四人の破戒僧は、何か見えない法則に動かされているようで、そこにはサドの無意識に根ざした夢…メカニックで自律的な生命活動への夢…があるように感じられた。反社会的だがどこか無邪気なその夢の中では、貧者の盗みも金持の淫蕩も等しく賞揚され、この世の階層は効力を失う。それどころか地震を起こして二百万人殺すという、自然の無効化さえ企てられる。実行した科学者が報酬を受け取らないのは廉潔さゆえではなく、無目的な快楽こそ本物と見るからだろう。快楽主義者サドは回転するコマのように自ら立っている。2013/11/04
KI
12
美徳は堕落の始まりで、幸せの終わり。2018/04/29
Ayah Book
9
サド特有の道徳観についてのお説教が少なく、とても読みやすくて面白かった。(あくまでギャグとして。本気で読んだら悲惨すぎ)世の中には偽善がはびこっているんだから~云々の話はわかるけど、「悪徳の栄え」なんかはやりすぎと思う。やりたい放題のジュリエットちゃんより、どんなに非道な目に遭っても美徳を信じるジュスティーヌちゃんの方が私は好きです。2018/02/07
わむう
7
記録漏れ。