内容説明
「どのエッセイも結局は文学のない世界では生きられない、ということを告白しています。実際には味わえない体験、自分とは異なる誰か、この世にはいない死者、そういうものたちへの想像力が、現実の私の救いとなってくれているのです」温かな眼で日常を掬い取り、物語の向こう側を描く、珠玉のエッセイ集。
目次
1 遠慮深いうたた寝(集会、胆石、告白;地雷だらけの世界で ほか)
2 手芸と始球式(手芸と始球式;指と果物 ほか)
3 物語の向こう側(干刈さんの指;二次会へ ほか)
4 読書と本と(官能とユーモア 田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』;恋をなくした時に読みたい本 ほか)
著者等紹介
小川洋子[オガワヨウコ]
1962年、岡山県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸専修卒業。88年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞し、デビュー。91年「妊娠カレンダー」で芥川賞を受賞。2004年『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、06年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、13年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、20年『小箱』で野間文芸賞、21年菊池寛賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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阿部義彦
26
河出文庫の今月の新刊です。平積みになってました。小川洋子さんの10年振りの文庫エッセイの帯が巻かれてます。小川さんは土曜か日曜の午前中にラジオで本を紹介する番組をやっていて、仕事で運転しながら良く聞いてました。今回プロフィールを見て初めて気づきましたが、私と一歳しか違わないのですね。と言う事は失礼ながらかなりのお年と言うことか。名久井直子さんデザインの素敵な本です。一つ一つは短いけれど、どれも趣向が凝らされていて読んでいて飽きないエッセイでした。次は彼女の『小箱』を読んでみようかな?2025/02/15
真琴
8
日々の暮らしや思い出、創作についてなどが綴られたエッセイ。ファンにはたまらない一冊だと思う。小川作品のみならず、読みたい作品が増えた。ミュージカルファンの小川さん。「ミュージカルに目覚めた途端、スケジュールの管理が大変になった」(P101)に大きく頷く。2025/02/23
ささ
3
なぜだか短編集だと思い込んで購入したので、エッセイで驚いてしまった。小川洋子さんのエッセイは初めて読んだけど、テンポも良いし、やはり文章がとても美しかった。デパ地下で落ち着かなくなったり、子どもに絵本を読んだり、豚汁を作ったり…私と同じ様な日常を過ごしているなんて不思議。小説を生み出すことの苦労や不安、希望や喜び、登場人物たちへの愛もたくさん知れて良かった!2025/03/08
マユ
3
小川さんのエッセイを初めて読みました。綺麗な落ち着いた文章で読んでいてとても楽しかったです。図鑑を見て空想して物語を作ることが子供の頃の楽しみで、それを元にしたのがブラフマンの埋葬。図鑑のブの所、見てみたくなりました。 小川さんは海外文学をよく読むんですね。どこか遠い国の出来事のように感じるのはそれが理由なのでしょうか。 最果てアーケードやことり、琥珀のまたたきなどの作品がどういう発想のもとで出来るのか知れてよかったです。 小川さんの文学を信じる強い力が凄く伝わってきました。2025/02/18
あさ
3
小川洋子のエッセイを初めて読む。思っていたよりとっつきやすく、題材もさまざまでおもしろかった。特に前半のなにげない日常のことや思い出話が好きかな。エッセイでも文章がとてもうつくしかった。2025/02/16