内容説明
准太上天皇に上り詰め、富も権力も手にした光源氏だが、女三の宮の降嫁から運命が急変する。柏木と女三の宮の密通を知り、因果応報に慄く。柏木は絶望の末に命を落とし、女三の宮は出産する。男女のすれ違う思い、苦悩と悲しみ。「若菜」は全54帖の中でもとりわけ完成度が高く、最高峰と評される。「若葉(上)」から「鈴虫」までを収録。
著者等紹介
角田光代[カクタミツヨ]
1967年神奈川県生まれ。90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、2003年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で直木賞、06年「ロック母」で川端康成文学賞、07年『八日目の〓』で中央公論文芸賞、11年『ツリーハウス』で伊藤整文学賞、12年『紙の月』で柴田錬三郎賞、『かなたの子』で泉鏡花文学賞、14年『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞、2021年『源氏物語』で読売文学賞(研究・翻訳賞)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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真琴
10
「若菜 上」から「鈴虫」まで。源氏は39歳から50歳。ああ、柏木・・・。この巻では、源氏をはじめ様々な苦悩が描かれる。訳者の角田さんも仰っていますが、本当に運命はほんの少しのボタンの掛け違えで動いてしまう。次巻(6月発行予定)が待ち遠しい。2024/04/12
rinakko
9
再読(角田源氏は初めて)。「若菜」から「鈴虫」まで。「若菜」は流石の面白さで、容赦ない因果応報の巻。もうそんなことも起こるまい…と安心していた矢先、光源氏に信頼を裏切られた紫の上は、それまで考えてもみなかった将来への不安まで抱く(辛…)。女三の宮を迎えることを決めた光源氏が、以前と同じように紫の上が妬いてくれると思い込んでいる辺り、如何なものか。紫の上から見て、女三の宮は嫉妬するには身分が高過ぎるし、そもそういう気持ちが薄れて心が離れつつあることもわからないのか…など。女三の宮もただ気の毒で…。2024/04/25
_salla
7
源氏物語の中でも特に名高い若菜上下と、柏木、横笛、鈴虫まで。 折口信夫が「『若菜』を読まなければ『源氏』を読んだことにならない」と言っていたくらいの帖で、実際、めちゃくちゃ面白いんだけど、なかなかここまで辿り着かないのが難点w 藤裏葉までは宮中で読まれていたと言われて納得するけれど、若菜以降はよくこれを特に道長の前で発表したなぁと、紫式部の根性が凄いなとなんか思う。 しっかしここからが源氏物語は面白い、と思うのだけど、1巻目と違ってレビューもかなり少ないし、たぶん売上も低いんだろうな…2024/05/02
AU
1
☆☆☆ 「若菜」は源氏物語の中で最もドラマチックとのこと。ちょっとしたボタンのかけ違いが重なって、思い込みや思い違い、大事になっていくストーリーは少し前のトレンディドラマのようでした。2024/05/10
biwacovic
1
猫の表紙がかわいい。そしてこの猫が柏木と女三の宮の密通のきっかけとなるのだ。そこからのドラマチックな展開。妄執とも言える柏木の恋と露見を中心とする「若菜 上」「若菜 下」のドライブ感すごい。因果応報。あらゆる局面での光源氏の「お前がそれゆうな」感もすごい。しかしあらゆるモノノケもこの呑気なおじさんには取り憑かず周囲の人ばかりが病んでいく無常の物語・・2024/04/18