出版社内容情報
【著者紹介】
1867年和歌山市生まれ。博物学、仏教学、自然科学等をもとに独自の方法論を確立した、博覧強記の民俗学者・粘菌学者。おもな著書に、『十二支考』『南方閑話』『南方随筆』『燕石考』など。1941年没。
内容説明
熊楠の人生は、あざやかな対照をしめす三つの位相からなる。まず、旅人として地球上の広大な空間を放浪した。つぎに、隠棲者として不動点で沈静した。そして最後に、その場で動きつづけるマンダラの主体として完成し、生活者となった。若き日の在米書簡やロンドン日記、履歴書などより、その人生の軌跡を浮き彫りにする。
目次
第1部 自らの名について(南紀特有の人名―楠の字をつける風習について;トーテムと命名)
第2部 アメリカ放浪―在米書簡より(杉村広太郎宛;喜多幅武三郎宛;羽山蕃次郎宛;三好太郎宛;中松盛雄宛)
第3部 ロンドンの青春―ロンドン日記より
第4部 紀州隠棲―履歴書より
著者等紹介
南方熊楠[ミナカタクマグス]
1867‐1941年。和歌山生まれ。博物学者、生物学者、民俗学者。大学予備門中退後、米英に留学、大英博物館に籍を置く。帰国後、田辺で粘菌の採取研究や民俗学に力を注いだ。博覧強記の人として知られる
中沢新一[ナカザワシンイチ]
1950年、山梨県生まれ。明治大学野生の科学研究所所長。思想家、人類学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
10
粘菌は動いている状態よりも動いていない状態の方が最も活動的だという。編者は動の中の不動/不動の中の動という仏教的概念を、米英から帰日する著者に重ね、田辺に定住した時期が最も活動的だった著者に粘菌との類似を見出したようだ。この類似は言語に沿って自然を語らず自然に沿って言語を用いる著者の思想と文体を彷彿とさせる。本書は著者自らの名付けとトーテミズムに始まり、19世紀末から著者が米英日の移動生活を書簡中心に追う。ロンドン時代、日本人との活発な付き合いと大英博物館に籠る著者の生活にも動と不動の関係が見出せそうだ。2022/11/30
キスイ
2
南方熊楠による書簡、日記などを収録。読んでいて全てを理解出来たとは到底言えないのだけど、思ったより楽しめる内容だった。ごく個人的な、形式ばっていない文章ばかりで南方熊楠のリアルな人となりを感じられる…ような気がする。文章に独特の勢いがあり、記憶力の良さとか回転の早さが伺えるのだけど、同時にちょっとどこかダメな人の気配がしてイメージが変わった。こんなもらって困る感じの手紙に、皆さんどんな返事を書いていたのかなぁ。2015/10/21
林克也
1
恥ずかしながら、熊楠本人の書いたまとまった文章を初めて読んだ。粘菌、羊歯類の膨大な研究成果と特異な行動、という面でしか知らなかったが、彼の興味の対象、行動力、人間関係構築力、知識、下ネタ、そしてある意味での生活力など、凄まじいパワーに圧倒された。やはりすごい人だった。2016/04/01
atseiji
0
初めて聞いた南方熊楠という名前であった。内容は現代てまは難しいが。どう表現していいかわからないが、見識が広い人であることは間違いない。図書館で借りたのでまた読んでみたい。2017/05/03