内容説明
世界経済は矛盾に満ちている。カネ、株式、エネルギーを独占する者たちの覇権争いに、私たちは巻き込まれたままだ。歴史的事実から紐解けば、やがて資本主義は終わりを迎えていく。帝国主義のイデオロギーにメスを入れ、西洋史の観点から解いた水野和夫の授業。東洋英和女学院大学大学院で行なわれた講義録を文庫化。
目次
第1章 貧困化する先進国
第2章 合理主義は限界に達したのか
第3章 株式資本主義はいつ誕生したのか
第4章 富は分配できない
第5章 近代社会の制度疲労
第6章 「帝国化」する世界
第7章 グローバリズムと富の集中
第8章 成長なき社会で
著者等紹介
水野和夫[ミズノカズオ]
1953年生まれ。経済学者、法政大学教授。三菱UFJ証券チーフエコノミスト、内閣官房内閣審議官、日本大学教授を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
月をみるもの
15
100円ショップに行くたびに、これだけの多様なものが製造・供給されるのは資本主義ならではだよな、、、と思う一方、著者の言うように全人類の1/5 は1日150円以下で生きていて、住居どころか食料にさえ事欠く有様。なのに日本では空き家が数百万件に達し、食用農水産物の1割が廃棄されている。国民国家のバリアをなくせば不平等が改善されるかと言えばそうではなく、豊かな国が豊かなのは他の国から収奪を続けてきたからだ、、という身も蓋もない結論。こうなってしまった理由を、もう少し遡って考えるために「万物の黎明」をよむかー2023/10/25
パット長月
8
大学での講義がベースだそうだが、だいぶ前に読んだ、同じ著者の「資本主義の終焉と歴史の危機 」と内容的には変わらない。が、立ち止まってあれこれ思いを巡らしながら読んだので、ずいぶんと時間がかかってしまった。別に難しい話ではなく、むしろ極めて常識的で無理なく理解できる内容である。著者の言う「金利は利潤そのものである」を前提にするといろいろと腑に落ちることも多い。日本の金利がゼロ=経済全体の平均的な利潤がゼロであるという現実の意味を、国民はよくよく理解する必要がある。利潤を生まない拡大で、中国もまたつらかろう。2024/01/01
えいこ
6
大学の講義がベースのため、例えや引用が多く、口語調で読みやすい。資本主義とは中心から周辺へと市場を拡大していくことで利潤を追求、成長していくシステム。周辺がなくなれば終わるはずが、電子・金融というZ空間を生み出したことで「より速く、より遠く」が限界を超えて膨張してしまった。制度疲労を迎え限界収益逓減が働いてきている経済が向かっているのが「帝国化」という説明には納得。少し前に書かれた本ではあるが、第6章以降はまさに現代の世界。アメリカ帝国に入りながら、その弱体化にどう対峙していくかは難しい舵取り。2024/03/31
ぱぱみんと
2
大学での講義を文章化しただけあって、とてもわかりやすい説明です。でも、この先生は、マルクスの資本論には詳しくないみたいですね。2024/04/03
Carol
2
そうか〜、資本主義では世界中が成長し続けることはあり得ないのか〜。そしてこの制度においては、日本はこれから急成長することはあり得ないんだな。なにかコペルニクス的な大転換がないと。金利の謎もなんとな〜くだけどわかった(きちんと理解するには私の知識が無さすぎた)。でも、だとすると今アメリカが力技ともいえるような金利上げを続けているのは、実態に即しているのかしら?よくわからないけれど、新たな問題を生むんじゃないの?と思いながら読んでました。2023/10/14