出版社内容情報
遊廓の女主人が凄惨なバラバラ死体で発見された。闇医者にして名探偵・荊木歓喜が衝撃の真相に迫る、傑作長編ミステリ!
内容説明
風車にぶらさげられ、ゆっくり回るのは足、腕、そして血みどろの美女の首。誰からも愛され信奉された娼館のマダムが無惨なバラバラ死体で発見された。夫、息子、従業員、記者、麻薬取締官、謎のマスクの男ら十二人の誰が彼女を十字架にかけたのか?酔いどれ医者の名探偵・荊木歓喜が衝撃の真相に迫る、圧巻の長篇ミステリ!
著者等紹介
山田風太郎[ヤマダフウタロウ]
1922年兵庫県生まれ。東京医科大学卒。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で第2回探偵作家クラブ賞を受賞。63年から刊行された「山田風太郎忍法全集」がベストセラーとなり忍法帖ブームをまきおこした。その後も明治もの、室町もの等多彩な作品で人気を博す。2001年7月28日逝去。10年にはその名を冠した山田風太郎賞が創設された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
278
藤田和日郎氏の表紙が目に止まり即購入。コレは本格推理小説。昭和初期の国内本格はやはり楽しく、プロットやロジックは、今の新本格以降の作品には数段劣るものの、逆に現代の作品では出ない、独特の雰囲気が豊穣。当時の文体や、無駄にエロ要素強めて人間関係を錯綜させる手法など、黄金期の海外ミステリとは一線を画した姿へと変容を遂げており、何でもガラパゴス化させる日本人気質が色濃く見える。この作品も、そういうオイシイ要素をふんだんに盛り込み、雰囲気や情景重視ではありつつも、何故かきっちり本格の匂いがする。2022/08/10
keroppi
84
売春防止法施行直前の赤線地帯が舞台。誰からも慕われた娼館のマダムが惨殺される。麻薬や精神病院も絡みながら、複雑な人間関係と事件の核心が明らかになっていく。探偵は、黒澤明「酔いどれ天使」を彷彿させる酔いどれの医者。「嘘倶楽部」での嘘を使いながら犯人を追い詰めていくやりとりは、なかなかのもの。山田風太郎が、こういう傑作探偵小説を書いていたんだ。他の推理編も読みたくなってくる。2022/08/08
鱒子
65
美しく人望厚い、娼家のマダムが殺された。バラバラに水車に吊るされるという残忍な方法で晒された遺体。異形の堕胎医 茨木歓喜先生が挑む謎、犯人は一体?——藤田和日郎さんの表紙が印象的すぎて、わたしの脳内ではこの絵が動き回ります。責任とってください、藤田さん、これ漫画化してください、お願いします。2022/09/27
koma-inu
45
周囲から愛されるマダムが、バラバラ死体となって風車にぶら下げられた。十二人の中の誰が犯人か?各々は死の直前にマダムと接しているものの、なんとなくアリバイが成立していて・・となると海外某有名作のアレか・・と思いましたが、探偵が示した犯人に、唖然!十二人の怪し過ぎる行動に目移りしてしまい、完全に騙されました。アリバイトリックはバカミスギリギリ、怪奇な雰囲気に乗せられて違和感は無いです。もの悲しい締めくくりも含め、全編見事なプロットに脱帽です。初山風さん作でしたが、別作も読みたくなりました。2022/09/18
Ayah Book
31
名探偵茨木歓喜シリーズ。山風先生にも名探偵シリーズがあるとは知らなかった。遊郭の美人女将は、とてもいい人だったのに、なぜ殺されたのか?今作もとても面白かった。ミステリーとしては、ヒントが少ないような気もするが、伏線はきちんと張ってある。現代人の私の感覚としては、犯人の気持ちも十分分かりますよ。本当に悲しい女の情感を書かせたら一流の山風先生です。歓喜先生は見た目はあれだけれど、とても優しい紳士キャラ。山風先生にしては珍しいけど、いいキャラです。2022/12/12