出版社内容情報
漱石研究をリードしてきた名コンビが、『文学論』と小説14作品を取り上げ、漱石文学の豊潤な可能性を阿吽の呼吸で語りつくす。
内容説明
漱石研究をリードしてきた二人が、難解とされる『文学論』を明快に解きほぐすことから始め、『吾輩は猫である』から『明暗』に至るまで、小説十四作品を取り上げて、漱石文学の汲み尽くせぬ読みの可能性を阿吽の呼吸で掘り起こす。近代文学は終わったとしばしば言われる。しかし漱石文学は、まだまだ終わりそうにない―。作品あらすじ、登場人物相関図、漱石略年表付き。
目次
『文学論』から見わたす漱石文学
1 『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『草枕』
2 『虞美人草』『坑夫』『夢十夜』
3 前期三部作
4 後期三部作
5 『道草』『明暗』
なぜ漱石は終わらないのか
著者等紹介
石原千秋[イシハラチアキ]
1955年生まれ。早稲田大学教育・総合科学学術院教授(日本近代文学)
小森陽一[コモリヨウイチ]
1953年生まれ。東京大学名誉教授(日本近代文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ホシ
18
漱石研究者による対談本。専門的なので私には難しすぎた(笑)。漱石作品は一通り読みましたが、もっと自由な解釈をして良いんだなというのが率直な感想。二人曰く『それから』はポ○ノ小説らしい。あと石原氏が対談のネタとして持ってきた当時の双六が興味深かった。「表情双六」や「買い物双六」に「大学生双六」など。今で言うなら「youtuber成金双六」みたいな感じかな(笑)。こんな物をヒントに明治の世相を出来るだけ正確に読み解いた上で漱石を楽しむ。こういう境地に辿り着きたいものですね。漱石、再読したくなりました。2022/09/24
しゅー
3
★★ツワモノ2人の対談。20世紀思想の一部には、テキストそのものを尊重し、作者や書かれた時代背景を無視するという流れがあった。本書は真逆で、漱石と明治と言う時代を緻密に読み解く。遠い昔に書かれた古典(ギリシャ・ローマとか)はともかく、近代の著作には本書のアプローチのほうがしっくり来るな。急速な「近代化」を遂げた極東の島国にとって、漱石の時代に人々がモノゴトをどう捉え、どう消化してきたかは大事な問題なのである。お金に関する問題や、当時の知識人の女性観、密かに書き込まれた政府批判などなど、とても参考になった。2022/03/27
DK-2084
2
★★★★☆2023/11/23
ゴリラ爺さん
1
小森と石原の対談。私は小森の漱石論が好きなので例によって彼の深読みを楽しく読んだが、対談なせいか割といい加減に喋っている気がしないでもない。特に「ここに誰々の無意識が出ているわけですよ」と、何もかも無意識のせいにしすぎだと思う。作者漱石の無意識と登場人物の無意識をあえて混同している節もあって、「もうテクスト論は脱却したから」という態度でかなり奔放な読みをしているのが気になった。石原も「私はこう読む」というのを大した論拠なしに語る箇所があって研究者というより漱石マニアの座談会という印象が強い本だった。2022/06/11
十文字
0
このふたりにとっては語り尽くされたと思われる漱石だけど、対談毎に自分に課したとされる石原による新たな問いによって掘り起こされた読み方が。 『虞美人草』『坑夫』『行人』の読み方はなかなかの発見だと思った。2023/05/23