出版社内容情報
時は幕末。箱館戦争で敗れて傷を負い、すべてを失った男が、厳しい未開の大地で羆撃ちとなり、人として再生していく本格時代小説!
内容説明
箱館戦争で敗残兵となった元幕府遊撃隊士の八郎太は、兄と仲間の佐吉とともに重傷を負い、蝦夷地の深い森へと落ち延びる。犬死しても意味はないと、兄一人逃がした八郎太であったが、残された瀕死の二人を待っていたのは人外の脅威だった。意識を失った八郎太が目を覚ましたとき、そこにいたのは口元から顎にかけて真っ赤に血で染めた漆黒の大ヒグマであった―。
著者等紹介
井原忠政[イハラタダマサ]
会社勤務を経て、執筆活動に入る。波乱の時代に翻弄されながらも、逞しく生きる人々の姿をユーモアと哀感を交えて巧みに描く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アッシュ姉
71
久しぶりのクマ本にテンションが上がる!重厚さや緊迫感などはあまり迫力が感じられなかったが、十蔵が何とも味があっていい。師弟の会話が面白かった。羆との対決はクマ好きあるあるでどちらも応援したくなったが、結末にも納得。足軽仁義シリーズを読むのがますます楽しみに。2022/10/19
yamatoshiuruhashi
51
三河雑兵心得シリーズがあまりに面白かったので井原作品を他に探してみたがこれだけだった。榎本武揚の下で戦った旗本次男坊の八郎太は落武者となり羆に襲われるが、一風変わった猟師・十蔵に助けられ、十蔵に猟を仕込まれることになる。十蔵亡き後、その妻と猟師としての技術を受け継いだものの、手負いで取り逃がした羆が人食いとなったためにこれを追い詰める責を負うことになる。蝦夷地の冬の羆撃ちの情景は過酷ながら美しい。著者の描写につい谷口ジローの描く絵を思い描いてしまう。熊谷達也の「邂逅の森」を思い出した。名作。2021/11/14
Nao Funasoko
32
久しぶりの"クマ本"。 時代設定やプロットは面白いのに主人公をはじめ登場人物(羆も含め)それぞれの書き込みが浅いせいなのか物語に奥行きがでてこない感じで残念。 喜代、或いは現代を生きる2人の子孫の視点でこの物語を描いてたらどうだっただろうか、、、なんてことを考えてみたりもして。2021/08/15
to boy
20
初めての作家さんでしたが楽しく読ませてもらいました。五稜郭降伏を受け入れられず逃げだした主人公八郎太。命を救ってくれた十蔵に猟師としての仕事を覚えさせられるが、元幕臣、武士であること、江戸から明治へ時代が変わった事を受け入れられず悩みながら猟師として生活していく姿が親しみやすかった。ラストはあっけないけれどちょっと楽しむには良い一冊でした。2021/08/10
のぼる
19
明治維新直後、武士であることを捨てられない八郎太。羆に襲われているところを、マタギの十蔵に救われる。八郎太と十蔵の掛け合いが面白い。十蔵と交わした約束を果たすことが出来るのか。羆『指欠け』との対決はどうなるのか。最後はハラハラした。 初井原さん。クマ本を探す途中で、この作品に出会ったが、『足軽仁義』シリーズで人気の作家さんと知った。読んでみたい。2022/07/06