出版社内容情報
なぜ、写真家は自殺した妻の最期をカメラに収めたのか? 写真家・古屋誠一に小林紀晴が挑む、極上のノンフィクション待望の文庫化!
内容説明
一九八五年のこと。写真家・古屋誠一は、妻・クリスティーネが自殺した直後の姿をカメラに収めた。九一年、東京のギャラリーで古屋の写真と出会った写真家・小林紀晴は「何を表現しているのか」と激しく混乱しながらも、気づけば「目を背けたいのだが、もっと見たくなる。とにかく、心が大きく揺さぶられ」ていた。十二年に及ぶ取材と執筆の果てに小林が辿り着いた、表現者の「呪われた眼」とは?人間の根源的欲望に迫る、傑作ノンフィクション!
目次
もはや写真ではない
けれど、ここで生きている
もっと命を燃やすために
読むべきものなのか、わからない
あなたが殺したのですか
死に追いやるために
美しく、晴れ晴れと
覚悟はできている
語りえない孤独
一回限りなのか
訊けば、終わらなくなる
すべてから、遠く
著者等紹介
小林紀晴[コバヤシキセイ]
1968年、長野県生まれ。95年、『ASIAN JAPANESE』でデビュー。97年『DAYS ASIA』で日本写真協会新人賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金木犀
4
写真家・古屋誠一は何故妻のクリスティーネが自殺するまでの様子を写したのか。そしてそれを写真集として何度も再編集する心理とは。―同じく写真家の小林紀晴が十年以上にわたり取材した内容が綴られている。本書では様々な対比が描かれているのが印象的だ。まず意外だったのは、死者の写真を発表することに批判的であるのが日本だけであること。これはヨーロッパとの死生観の違いによるものらしい。また、同じく妻を写した荒木経惟と対比すると古屋は〈呪われた眼〉を持っていることがわかる。妻との過去を見つめることは救いなのか、復讐なのか。2021/09/10
島の猫
2
古屋さんと言う写真家を小林さんと言う写真家が描いている。非常に主観的で、だから熱情が、こもっている。 理解したい わからないものを知りたい 追求したい そんな欲求を強く感じられる。 自分のどん底を見た時にその闇を以って、闇を進む人と、光に変える人がいるのだと思う。 どっちがいいも悪いもなくて只の傾向でありプロセス。 もしかしたら、行き着くところは似たようなところなのかもしれないのだけれど 古屋さんは前者で荒木さんは後者。 できることなら私は荒木さんでありたい。 2021/02/24
kogufuji
2
見たい知りたい、それは欲だと思う。撮り続けるという進行形の写真ではなくて、過去に撮った写真を作品として編み直す。なぜ?って当然思うけれど、必要だからそうするということがわかった。必要な理由は作家だけが持っていればいいのではないかと思う。2021/10/29
COS
2
「まだ1度も見たことのないもの、経験したことのないこと、撮られたことのないものを目の前にした時、写真家にはそれが非常に魅力的に映るのだ。」古屋さんは魅力的に映ったからそれを撮ったのか。それと同時に、生まれた時には写真を撮るのに、なぜ死んだ時には写真を撮らないのだろう、とふと思った。2020/11/12
louzoso
1
一気に読んだ。目に見えるかたちで残すということについて考えた。絵や音楽、、他の芸術と何が違うかって、その場にいたかいないかが明確すぎるんだな。当然だけれど。だからこそ写真が持つリアリティ、生々しさは他の比じゃない。でもみんな同じなのは、人の心はどうせわからないということ。どうやっても。当然だけれど…2022/06/17