出版社内容情報
戦後を代表するジャーナリストが遺した、ジャーナリズム論とルポルタージュ傑作選。今こそ響く、権力と慣例と差別に抗った眼識。
内容説明
ジャーナリズム・メディア論、“戦後”日本人論、ルポルタージュ作品など、弛緩する現代日本を屈強な筆致で突き刺す、権力と差別と慣例に抗い続けた孤高のジャーナリストが遺した視座。今こそ読むべき、「戦後」を代表するジャーナリストの眼識。
目次
第1章 持続する怒りを―拗ね者のジャーナリズム精神(テレビとは面白ければそれでいいのか;誤報・虚報を続発する「大新聞の欠陥」を考えた;“やらせ”を問う ほか)
第2章 植民者二世の目で―根なし草のまなざし(旅 心の風景―仙崎;筆を措けなかった理由;高拓生をたずねて ほか)
第3章 「戦後」を穿つ―単行本未収録ルポルタージュ集(不況の底辺・山谷;立川 民主主義という名の村八分;むつ小川原 ゴールド・ラッシュの恍惚と不安 ほか)
著者等紹介
本田靖春[ホンダヤスハル]
1933年、旧朝鮮・京城生まれ。55年、読売新聞に入社。71年に退社し、フリーのノンフィクション作家に。2004年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
竹園和明
35
極端に尖ったアンテナを持った人。朝鮮に生まれ、中学の時に日本へ帰国。新聞記事を経てフリーのジャーナリストへ。政治や慣習などに「おかしい」と弾ずる強い意志と信念を貫いている点が凄い。本作は70年代から90年代までに雑誌等に寄稿した文を集めた作品だが、現代なら激しいバッシングに遭うのでは?と思うような過激な内容も載せられている。労働者目線で日本の裏側を見て告発するパワーは、今のジャーナリスト達が失ってしまった魂そのもの。腑抜けて弱腰になってしまった日本に対する喝。氏がご存命だったら、今の政治に怒り心頭だろう。2020/12/10
こも 零細企業営業
20
戦後を代表するジャーナリストと安田浩一氏の本に書いてあったので読んでみた。昭和40年代から平成初期のはずなのに、問題点の本質は変わらない。テレビはウケ(視聴率)重視。新聞の誤報と虚報、ヤラセは相変わらず。高校野球も小手先は多少改善してるだろうが相変わらず。六ヶ所村の件は開拓した人達の生い立ち、当初の苦労を読みそして、現状のアレが鎮座してるのを考えると、このルポはなかなかに面白かった。 2020/03/24
チェアー
13
人がいる世界を愛し、人をないがしろにする人や組織を許さなかったジャーナリスト。現代では問題になりそうな考え方(ジェンダーとか)はあるが、不正を憎むという根っこは揺るがない。そんな人に会ってみたかった。2019/12/24
まると
12
久しぶりに本田靖春節を聞けて感無量です。と同時に身の引き締まる思いもしました。ぶれずに常に「下から」目線で、市井にいる弱者への眼差しが温かい。その立ち位置が素晴らしい。舌鋒鋭い「派閥記者」批判は、権力にへつらって情報を得るだけで満足している現代の新聞記者たちほぼ全員に向けられたものと解釈したくなる。時代が生んだ部分もあるけど、こういう孤高のジャーナリストはもうなかなか出てこないでしょう。編集したのは河出書房にいた頃の武田砂鉄さん。こういう形で読めるのも、武田さんの「本田愛」のおかげと感謝したくなりました。2020/09/22
ラム
4
本田靖春は「疵」しか読んでいない 本書は単行本未収録のルポルタージュ等をまとめたもの 既に没後18年が経ちその名を目にする機会もなくなってきたが、テレビで見た強面のイメージが残る 冒頭いきなり舌鋒鋭く、自身関わったメディアに対する怒りが噴出したじろぐ 記者としての矜持が書かせたのであろうが、状況は今も変わっていない 第二章は自身の生い立ちや「拗ね者」の視線で捉えた世相 第3章のルポはいずれも70年代のもの 時の経過は如何ともし難いが、本田の「複眼」の視点は今でも息づいている 編者は河出在職中の武田砂鉄2022/06/12