出版社内容情報
寂れゆく商店街に現れた若きリーダー図領。彼の魅力的な言葉と実行力に街は熱狂、「希望にあふれる未来」を誰もが歓迎したのだが…。
星野 智幸[ホシノ トモユキ]
著・文・その他
内容説明
さびれゆく松保商店街に現れた若きカリスマ図領。クレーマーの撃退を手始めに、彼は商店街の生き残りを賭けた改革に着手した。廃業店舗には若い働き手を斡旋し、独自の融資制度を立ち上げ、自警団「未来系」が組織される。人々は、希望あふれる彼の言葉に熱狂したのだが、ある時「未来系」が暴走を始めて…。揺らぐ「正義」と、過激化する暴力。この街を支配しているのは誰なのか?いま、壮絶な闘いが幕を開ける!
著者等紹介
星野智幸[ホシノトモユキ]
1965年、アメリカ・ロサンゼルス市生まれ。88年、早稲田大学卒業。新聞社勤務後、メキシコに留学。97年「最後の吐息」で文藝賞を受賞しデビュー。2000年『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、03年『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞、11年『俺俺』で大江健三郎賞、15年『夜は終わらない』で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かみぶくろ
84
いい感じに陰険で楽しく読めた。この作者はクズの生態を余すところなく熟知している。そしてそんなクズの原料とは、何者にもなれずに承認を求めてもがく我々が、身の内に潜ませている黒い何かだ。だから物語の範囲は一つの商店街の中で起るいざこざでしかないないのに、そのテーマは、現代日本、果ては不寛容がはびこる世界の隅々まで普遍化して照射する。言葉って、つくづく呪いと紙一重だと思う。2018/10/21
路地
48
星野さんの他作品と同様、ディストピアっぷりが冴えわたる1冊。さびれつつある商店街で、信念を持って独立したものの商売がうまくいかない主人公と、かたや優れたセンスで成功する図領。その商才を認めながら懐疑的に見ていたはずの主人公が、転落するように取り込まれ、図領の意思も超えて集団自決まで暴走していく様に、宗教問題でたびたび問題になる洗脳問題の深刻さを思い怖くなる。2023/02/11
はじめさん
26
桐野夏生の紹介帯につられて。/ どこにでもある商店街。オシャレ系の雑貨や飲食店は短期間で潰れ、昔からの店でもジリ貧だが、生え抜きと余所者との溝もある…そんな中、若手の旗手として居酒屋を経営する男の店に現れたクレーマー「ディスラー総統」により、ある事ない事がネットに書き殴られ、たちまち炎上→押し寄せるネット民…組合でちょうど男の改革案に反対していた古参により槍玉にあげられるが、それは居酒屋男の罠。たちまち世論を取り込み、逆に客が溢れ商店街全体が活気づく。シンパたちをまとめた男の次なる狙いは。「正義」とは?2018/10/31
シキモリ
22
寂れゆく商店街に生じた小さな波紋。その余波は町に思い掛けぬ好機を齎すが、町の自警団【未来系】は次第に暴走し始める―。序盤は町おこし小説の様相を呈するが、中盤以降は町の権力者による選民思想が展開されていく。主人公や町のうらぶれた若者達は洗脳され、意義ある死に魅入られるが、隣人の湯北がそこに一石を投じる。目の前の苦しみから逃れる為の死よりも、長く険しい生を選ぶ勇気が蔓延する【呪い】に抗う力を産み出す。多数派に煽動されることなく、少数派の自分らしさを貫く心は未来を創る礎となる。著者の強いメッセージを感じる作品。2020/11/26
ネムル
16
ネットでのヘイトと容易に煽動される大衆。どこかで見たような、見飽きたような言説とぺらい登場人物。この手垢のついたぺらさが作品に説得力を与えている一方で、この手垢を小説がいかに乗り越えうるかというジレンマに目をつむっている印象を受ける。端的にいって、全く面白くない。2019/01/10