出版社内容情報
大阪を舞台に、とむらい師たちの愚行と奮闘、笑いと悲しみを通じて「生」の根源を描く表題作のほか、初期代表作を収録。
内容説明
死顔にはその仏の一生の歴史がかたまってるわけやな―死者の顔が持つ威厳と迫力に魅力され、葬儀博の実現に懸ける男・ガンめん。マスコミを巻き込み葬儀のレジャー産業化に狂奔する男・ジャッカン。戦後の大阪を舞台に、とむらい師たちの愚行と奮闘、笑いと悲しみを通じて「生」の根源を描く表題作のほか、初期野坂昭如を代表する短篇を収録。
著者等紹介
野坂昭如[ノサカアキユキ]
1930年、神奈川県鎌倉市生まれ。45年、神戸大空襲で養父を失う。早稲田大学を中退後、音楽事務所勤務、コント台本作成、作詞等を手がけ、63年『エロ事師たち』でデビュー。同年、童謡「おもちゃのチャチャチャ」でレコード大賞作詞賞、68年「アメリカひじき」「火垂るの墓」で直木賞、97年『同心円』で吉川英治文学賞、2002年『文壇』およびそれに至る文業により泉鏡花文学賞を受賞。15年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ω
15
野坂昭如とは私の中で非常に興味深い憧れの作家さんであるω 顔は知らない。 少し年上の人たちに話をすると「大島渚をぶん殴った」とか「相当変わり者」とか言うのが不思議。 このベストコレクションは、愛のない肉欲の短編の数々と、表題作中編のとむらい師たち、死をビジネスにして一発当ててやろうと考える4人組の話。 ぷっω と吹かせておいて、ズコーーンと落としてくるとこ。ホント大好きです( ^ω^)2018/08/26
SAT(M)
8
高度成長期に起こった母親による娘殺しの動機を、戦時期のある事件に求める「死児を育てる」、平和で豊かな時代と空襲にさらされた貧しい時代を、(おそらく意図的に)節操なく行ったり来たりさせて描いている点、昭和の二面性というのが筆者の主題の一つなのではないかと。表題作「とむらい師たち」もまた喜劇調ではありながら、戦時下にはゴロゴロところがっていたはずの「死」が、平和とともに遠いものとなりった時代へのアンチテーゼ的作品。「ぶっ壊れていて何が悪い!」と言わんばかりの野坂節が痛快です。2017/08/05
えりんぎ
6
野坂昭如さんの初期の短編集。ぶっ飛んだお話が、じっとりとした湿度の高い文章で書かれる。人間って本当にしょうもない、でも野坂さんはそんな人間が好きなのかな。『死児を育てる』という話の、淡々と戦中戦後を語る雰囲気は、実際にあの時代を経験した人でないと書けないだろう。2022/02/16
ナカユ〜、
2
だいたい既読なんだけど、こういう作風って今はどうなんだろう、僕は全然読めるんだけどなかなかねぇ、今では絶対言えない言い回しや、この感覚など、若い人たちは分からないだろうな、とか言いつつ僕が野坂昭如を読んでたのは20代w、分かる奴は分かるんだよな、2021/11/02
ジャッカル
1
「マッチ売りの少女」が悲しくも切ない。少女はマッチなどは売らなかったけれども、何故「少女」としなければならなかったのかは、読者の解釈でいいと思うし、読み終えると含畜のあるタイトルなんだなと思う。ゴミ箱をひっくり返したような良作。2021/09/05