出版社内容情報
夜這いなどの村落社会の性風俗、祭りなどの実際から部落差別の実際を描く。柳田民俗学が避けた非常民の民俗学の実践の記録。
赤松 啓介[アカマツ ケイスケ]
1909?2000。民俗学者。主著に『夜這いの民俗学』『差別の民俗学』など。
内容説明
“境界”においてこそ、多様な階級の農民や非定住民の生活様態が顕在化する―。祭りなどの非差別民の民俗、土俗信迎と夜這いの性民俗から非常民の実像に迫る赤松の代表作。「せめて村落共同体の最末期の環境と、戦時下における抵抗と屈従の歴史を残しておきたい」というのが唯一の目標であるとする赤松民俗学の遺産。
目次
1 民俗境界論序説―はしがきに代えて(無間の鐘を撞く;境界の調査と弾圧;非定住人の世界;性的民俗の境界性;都市民俗の連帯性 結びとして)
2 村の祭礼と差別(酒見北條の節句祭り―播磨・加西郡北條町;農村の結婚と差別の様相;ムラとマツリ)
3 土俗信仰と性民俗(新婚の民俗;土俗信仰と性民俗;共同体と“性”の伝承)
著者等紹介
赤松啓介[アカマツケイスケ]
1909年、兵庫県生まれ。民俗学者。戦前、左翼運動に身を投じ、治安維持法違反で検挙され、非転向のまま有罪となり投獄されるが満期釈放。夜這いを中心とする性や差別、境界のフィールド調査を進め、柳田民俗学を補完する“赤松民俗学”を追究した。2000年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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乱読家 護る会支持!
4
赤松さんは、ド左翼の方で、政治犯として獄中にもいれられ、「天皇制(これ自体が左翼用語ですが)」を徹底的に批判された方です。性と差別の民俗学を研究されたのも、「天皇制」を打倒する活動の一つであったそうです。 戦後のソ連、中国の「共産党独裁国家」を見れば、人類がマルクスが唱えた共産主義を現実化するためには、まだまだ試行錯誤が必要なようです。 人間に感情と欲求がある以上、完全に平等な社会は出来るはずがなく、秩序を保ち、戦争の少ない社会を安全な社会を作る為には、ヒエラルキーは絶対に必要と思います。2021/07/05
artgrape
1
柳田民俗学に対する批判として、常民で構成される「理路整然」としたムラではなく、差別や排除があるムラの実態を記録しようとする。差別や排除についての道徳的判断は一旦ここでは保留として、赤松が、そうした人間臭いドロドロしたムラの描写を通じて主張しているのは、国家の統制などなくともムラ、村落共同体は存続し続けるということである。民衆は自らの共同体は自らで維持しえる。それだけの知恵と知恵の蓄積がある。支配層ではなく、地べたを這って生きるニンゲンへの深い愛情と確信を感じる1冊。2022/02/09
いきもの
0
図書館。学びはあるし一理あると思う内容も多いが、村社会に回帰せよという考えはどうにも共感ならない。変化もまた民俗であると思う自分としては、祭りの観光化は決して否定するべきものではないと思うんだけどな……。そもそも神事→村民の楽しみ→観光化という広がりの一つであり、堕落といえばそうなんだけど、なら喧嘩祭りに変わったのだって堕落であるんだし、一時代を取って「ここがよかった」と言うのは恣意的にすぎるというか、懐古主義でしかないように思う。2023/09/11
わ!
0
相変わらず面白い赤松民俗学である。おそらく本筋の民俗学を学んでいる人からすれば、耳が痛い(読んでるわけだから「目が痛い」のか?)内容も多いのだが、相変わらず「柳田民俗学」の欠陥を指摘しまくる一冊に仕上がっている。とにかく!このような赤松民俗学の本が、こんな風に安価で読むことができるのは嬉しい限りなのでありました。2018/08/07