出版社内容情報
混迷の時代に射す一条の光、現代語訳「方丈記」。引揚者として激動の戦中戦後を生きた著者が、人間の幸福と老いの境地を描く名著。
三木 卓[ミキ タク]
1935年、東京生れ。早稲田大学卒業。芥川賞、平林たい子賞、芸術選奨文部大臣賞、谷崎賞、読売文学賞、2006年「北原白秋」で毎日芸術賞、藤村記念歴程賞、蓮如賞を受賞。07年、日本芸術院賞恩賜賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
エドバーグ
3
自然や体制に対する個人の無力さを嘆きつつ、受け入れる様を、たんたんと綴っています。欧米では評価されませんが、日本人は「なかなかやるなぁ」と思う機微 を見事に表現しています。やるなぁ。。。2020/02/18
つな子
2
「方丈記」を三木卓さんが現代語に訳し、さらにご自分の半生を綴り訳を補強してゆく。三木さんに鴨長明が重なっていくから不思議だ。長明が方丈記で自身について「縁欠けて」と語る。私はこれを「医療も未熟で物騒な時代だったしなあ」と軽く捉えていたが、三木さんの「(大戦下で)父親の死などありふれていた。だが、当人にとっては、ありふれたことなどではない」の一文にハッとさせられた。水の泡のように儚く生まれ死ぬ人間は、その儚い時間を唯一無二の個人として生きているのだ。私は方丈記の何を読んだというのか。自らの読書を反省した。2017/02/26
ウエノヨウジ
1
この本では方丈記の現代語訳をすると同時に、本文と対応するような出来事を自分の人生から引っ張り出してきている。三木卓の地に足のついたような文章は安心感が有って良い。満洲のこと、静岡のこと、団地のこと。こうしてみると、彼が物凄い人生を送ってきたことがわかる。ふとしたときに読み返したくなる。2017/07/05