出版社内容情報
筆との、墨との出会い。戦争中の疎開先での暮らしから、戦後の療養生活を経て、墨から始めた国際的抽象美術家の代表作となる半生記。
内容説明
初めて筆を持った五歳のお正月―「ヨコ、タテ、ヨコ、タテ、ヨコ」と大きな声を出して墨で紙に書いた「正」の字。ここから桃紅の芸術が始まった。万葉仮名、江戸風鈴、ある印人、古人の書状との心の対話など、書の修錬によって墨で独自の美を創りだした国際的抽象美術家、名エッセイストが綴る、代表作となる半生の記。
目次
かりのすみか―君看ョ雙眼色
朱華―柿の実
二藍―日蝕の電話
雪―兆し
墨―すみのいろ
拾―ものの味
古日―時間
著者等紹介
篠田桃紅[シノダトウコウ]
1913年、中国・大連生まれ。書家、抽象美術作家、エッセイスト(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キャシー
2
美しい色を感じられる随筆。2018/08/25
波 環
2
著者は水上勉の『五番町夕霧楼』の文庫の装丁者だという。40年前からみていたのか!と驚く。身の回りの小さなことにまで神経が敏感で文章にしているけれど、この人が墨のようなシンプルな道具を使う芸術家だったは天啓かもしれない。複雑な道具立の美術家だったら隅々まで色彩や形状を表現しきれなくて気が狂っていただろう。着物の話が一節あったので読んだのだが、この年代な人はやっぱりそうか、話だった。締め付け下着がイヤ、みたいな。2015/07/15
a6
1
p.38 二つの歌のどちらがいいわるいの価値判断はなかった。ただ楽しく一心に練習してきたものを、理由があってもなくても、切り捨てるということだけに心が動揺していた。/▽どれもよく感じてどれも選べないところがあるので、そういう感性が羨ましかった。2021/08/10
まさきち
1
美しい表現の言葉をもつ人は、かくも記憶が鮮明なのかと思った。当てはまる言葉を知っているから克明に記憶に刻まれるのだろう。と冒頭の章とその次くらいは感動しながら読んでいた。しかし途中から食べ物や着物などの丁寧な暮らしの他漢詩や書と言った向きに素養がないので飽きてきてしまった。2020/05/12
青山潤子
1
素晴らしい色彩感覚の溢れた日本語の文章に触れることができる。こんな文章は久しぶりだ。2015/10/03