出版社内容情報
戦時下の弾圧で壊滅し、戦後復活し急進化した“教団”。その激動と興亡を早逝した天才作家が壮大に描く永遠の必読書。解説:佐藤優。
内容説明
昭和六年、母を失くし「ひのもと救霊会」を訪ねた少年・千葉潔は、教団に拾われた。やがて時代は戦争へと向かうなか、教団は徹底的に弾圧を受け、教主は投獄される。分派、転向、独立…壊滅へ向かう教団の運命は?一九七一年三九歳で早逝した天才作家が『朝日ジャーナル』に連載した日本文学の金字塔。
著者等紹介
高橋和巳[タカハシカズミ]
1931年生まれ。1971年に39歳で早逝した小説家、中国文学者。『悲の器』で第1回文藝賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
402
時は昭和初年。第1次の弾圧で、本殿をはじめ主だった宗教施設を破壊された新興宗教集団「ひのもと救霊会」(カルトではない)への第2次弾圧で物語は始まる。淫祠邪教とされ、直接的には不敬罪がその理由とされた。しかし、そもそも教団は、天皇制の否定以前に、明治政府によって企てられた男性の支配原理による国家統一・富国強兵に対する「否」に端を発していたのである。明治期に起こった天理教や大本教などは、そうした体制からこぼれ落ちた女性によって始められ(初代は多分に神がかり)、2代目の教主によって理論化・体系化されていった。⇒2022/05/05
キャンダシー
73
人は何かを信じたいから信じるのか。信じるべき何かがあるから信じるのか。もし神の神性に量子論を適用することが許されるとしたら、ひのもと救霊会の「世なおし」がルサンチマンのアリバイという無倫理性、虚無的な世界破滅へと疾走する終末思想や千年王国の理想をボルヘス的な観念の遊戯にすることも教主仁二郎なら可能だったのかもしれない。運命という言葉がなければ、人生を耐えられないほど苛酷な状況下で、ひとはなぜ、これほどまでに生をその純粋な姿で生きることができるのだろうか。特に印象深かった千葉潔と行徳阿礼の孤独の深さを想う。2020/12/22
アマニョッキ
65
この本をなんと表現したらいいのか。物凄く面白いのになかなか読み進められない。重いボディブローを喰らい続けながら、脳にはずっと麻薬をぶちこまれているような感覚。こんな読書体験ははじめてかも。架空の新興宗教「ひのもと救霊会」を通して描かれる、宗教、弾圧、性、格差、部落、ハンセン氏病、等々、とにかく生半可な気持ちでは太刀打ちできない。作者は39歳で早逝したそうだが、こんなどえらい作品をその若さで書き上げたことにまず驚く。下巻も怒涛だろうが、わたしの身体と脳は果たして持つだろうか。熱出そう。怖い。でも読みたい。2018/03/04
こばまり
55
マ、曼荼羅ダァーッ‼︎かつてこれ程まで綿密に書かれた日本の小説を私は読んだことがあったろうか。高橋和巳が創り上げた架空の新興宗教団体を内包した日本近代史が新たに刷り込まれてしまった。まだ半道中だというのに今夜は知恵熱を出しそうです。2015/10/23
ヨーイチ
53
母親の本棚にあった。コメントは下巻にて。凄いし面白い。本当はメモ取ったり、考えながら、間を置かずに読みたい本。宗教とか救済とか社会運動がテーマであると思われるが、小説としても面白い。取り敢えず大本教とは別物として読んで差し支えない模様。でもWikiしちゃったけど。2017/08/25