出版社内容情報
珠玉のフランス短篇小説群をオリジナル編集。シュペルヴィエル『ひとさらい』など、絶妙な展開と文体の傑作選。
【著者紹介】
1928-87年。東京生まれ。東大仏文科卒業後、マルキ・ド・サドの著作を日本に紹介するかたわら、人間精神や文明の暗黒面に光をあてる多彩なエッセイを発表。晩年は小説に独自の世界を拓いて、広く読まれた。
内容説明
怪奇・恐怖・神秘を主題に、澁澤龍彦によって選ばれ翻訳された珠玉のフランス短篇小説群をオリジナル編集。『澁澤龍彦訳幻想怪奇短篇集』の続編。子供を何人も連れ去って一緒に住む奇妙な紳士を描いた『ひとさらい』のシュペルヴィエルは、澁澤がコクトーの次に熱中したと語った詩人で、文庫版初出。ほかに、マンディアルグやカリントンなど、意表を突く展開と絶妙な文体が愉しめる傑作選。
著者等紹介
澁澤龍彦[シブサワタツヒコ]
1928‐87年。東京生まれ。本名龍雄。東大仏文科卒業後、マルキ・ド・サドの著作を日本に紹介するかたわら、人間精神や文明の暗黒面に光をあてる多彩なエッセイを発表。晩年は小説に独自の世界を拓いて、広く読まれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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青蓮
83
長らく積読でしたが、漸く読みました。怪奇、恐怖、神秘を主題に澁澤龍彦によって選ばれ翻訳されたフランス短編小説集。「草叢のダイアモンド」「罪のなかの幸福」「仮面の孔」「ひとさらい」「死の劇場」「最初の舞踏会」収録。面白かったのは子供が出来ない紳士が子供を拐って養子にする「ひとさらい」、人が死ぬ瞬間を見物する「死の劇場」、舞踏会嫌いな少女が友達のハイエナを身代わりにする「最初の舞踏会」。2015/10/09
優希
76
澁澤龍彦が選び、翻訳したフランス文学の数々。澁澤選なので、怪奇、恐怖、神秘の要素が色濃く感じられました。いかにも好みそうな作品ばかりです。この作品のメインとなるのは矢張りシュペルヴィエルの『ひとさらい』でしょう。子供を何人も連れ去り、一緒に住む奇妙な紳士の理性と欲望、夢と現の狭間で引き裂かれそうになる様子が生々しく、滑稽に描かれています。紳士であるからこその自我の交錯が面白い。他の作品もそれぞれにいい作品ですが、偏りがあるので「怪奇」を純粋に求める作品ではないですね。2015/10/14
sin
58
暗黒でも怪奇でもなく、因縁観念短篇集か?森羅万象に抱く渇望に基づく自然界の描写と、人間至上主義のうえでの人間観察に基づく人物描写の数々…フォルヌレ・ただの偶然が因縁めかして語られる。ドルヴィリ・卑劣漢と美丈夫な女性。ロラン・ただの夢想落ち!シュペルヴィエル・独り善がりな男の一人芝居!マンディアルグ・儀式としての公開模様を死の厳粛さと対比させる意図があるのだろうか、だとしても余りに女性蔑視の低俗な見世物に貶めた有り様に死の尊厳は感じ得ない。カリントン・フランス落語。2022/08/07
翠埜もぐら
22
「ひとさらい」「死の劇場」以外創元推理文庫で既読。「ひとさらい」のジュール・シュペルヴィエルは澁澤氏がコクトオの次に熱中した詩人だそうですが、話の方向がどんどん変わってしまい、煙に巻かれたというかあっけにとられたというか。氏のエッセイは明快なのに小説は難解だったのは、思考がこちらよりだったからなのかと思いました。ところで「暗黒怪奇短篇集」だそうですが、どの話も人を食った話で「暗黒」ではありましたが、どの辺が「怪奇」だったのかしら。渋澤氏の好きな怪奇小説って癖が強すぎ。さすがマルキ・ド・サドの研究者。2022/05/03
いりあ
8
澁澤龍彦氏のセレクション及び翻訳によるフランス短篇小説のアンソロジー。ジュール・シュペルヴィエルの「ひとさらい」が読みたくて手に取りました。ロリータコンプレックスを取り扱った作品という意味では男性の暗黒面を描いた作品ですね。ラストはあわれというかなんというか…。「草叢のダイアモンド」は幻想的な作品、「死の劇場」は死のイメージが重苦しく、「最初の舞踏会」は大人のための残酷童話でした。あくまで澁澤龍彦流「暗黒怪奇」なので、どの作品も一筋縄ではいかない内容です。そしてフランス文学のエスプリが感じられる翻訳です。2018/06/03