内容説明
日本に古くから伝えられている生活文化を理解するには、まず古いものを温存してきた村や町が、どのように発達して今日に到って来たかを知っておく必要がある、という視点から具体的にまとめられた、日本人の魂の根底に遡る生活空間論。町と村の実態調査からコミュニティー史を描く宮本民俗学の到達点。
目次
第1章 都会の中の田舎(東京の田舎者;ふるさとの殻 ほか)
第2章 町づくり(町の芽;商人町のおこり ほか)
第3章 村と村(ムラの成りたち;ムラの格式 ほか)
第4章 村の生活(人は群れて住む;村落共同体 ほか)
第5章 村から町へ(群の絆;群からはなれる ほか)
著者等紹介
宮本常一[ミヤモトツネイチ]
1907年、山口県周防大島生まれ。民俗学者。天王寺師範学校卒。武蔵野美術大学教授。文学博士。徹底したフィールドワークと分析による、生活の実態に密着した研究ぶりは「宮本民俗学」と称される領域を開拓した。1981年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Akihiro Nishio
22
出張中の岩手で買った本。こういう本は岩手で買うことに意味があるんだよと得意げだったがまさかの再読。宮本の本は同じような話が何度も出るので途中まで気づかなかった。しかし再読でも新たに気づくことがたくさんある。今回は人と人、村と村がどのようにつながってきたかという点を丁寧におさえていることに感じ入った。自分の関わっている途上国はまさに村から町へと変貌していくさなかであり、自分が仕事をする上で、もっと現地のネットワークに注目する必要があることに気づかされた。2016/11/07
T2y@
18
民俗学との出会いの一冊。 一様に貧しかった、かつての日本の民衆。ムラ協同の力で乗り切り結束して生きてきた、その結束と仕来(しきたり)、そこに住む人々の営み。 江戸時代以降、明治・大正・昭和・戦後の変遷。 ムラハチブ、間引、オジ・オバの存在。 歴史とはまた違う、日本の歩みをまだまだ学ぶ必要がある。2014/03/26
Akihiro Nishio
16
新年度を宮本常一からはじめられる幸せ。本書は、村落の成立から村の規則ができて、やがて消滅していくまでを解説する。村落共同体のたががゆるんでから富農が誕生し、農民の中でも主従ができていったというのは意外だった。また、漁村や、村落を超えた経済共同体である「講」や宗教共同体についても語られ、村落という単位を超えて人が複雑に結びつきあっていたことがわかる。2016/04/02
HANA
16
町や村の生活や変遷を描いたもの。何となく民俗学より社会学っぽい。町の人間も田舎を引きずっているという記述があったが、それももう50年近く昔。今は定住して完全に都会の人間として暮らしているのがほとんどではないかと思う。村の生活の方は著者の独壇場。豊富な聞書から村の発展や寂れていく様などを余すところなく書いている。この本が書かれてから50年、もうここに書かれたような生活は何処にも無いんだろうなあ。2012/03/19
壱萬弐仟縁
12
第2章町づくりの中で、商人の役目という節がある。評者の住む地域の自営業社長は、自分だけ偉ければいいというタイプの人らしく、町づくりにはなれない地域。昔の地域例は、飯田や水窪が出てくる。中国地方では牛市の事例(68-9頁)。商人の現代的意義は、自分たちだけが潤う我田引水ではない筈だ。そこに気付けないので、住民の声を無視して儲け儲けであーなっただろうな。216頁の村八分。今もいじめはある。火事、葬式以外、関係を絶つムラハチブ(217頁)。世間体は230頁~。いずれにせよ、成員合意なしに万能な規範、慣習は無い。2013/06/05