内容説明
西欧の作家に関する澁澤のさまざまなエッセイを一堂に集め、生年順に並べて総覧にした文庫オリジナル集成。下巻は、ナボコフやジャン・コクトーに始まり、シュルレアリスムとブルトン、バタイユ、そしてサルトル、ピエール・ド・マンディアルグ、ジュネ、最後にレアージュの『O嬢の物語』など、偏愛し翻訳した作品も含めて収録。
目次
バッソンピエール談義(マルジナリア)
無垢な想像力(一頁時評)
ジュール・シュペルヴィエル『ひとさらい』あとがき
プラトニックな蝶―ナボコフについて
ジャン・コクトオ『大胯びらき』あとがき
文章家コクトー『大胯びらき』をひいて
ジャン・コクトー(「作家と作品」)
ジャン・コクトー『オイディプース王』(『コクトー戯曲全集』第一巻解説)
ジャン・コクトオ『ポトマック』あとがき
一冊の本―コクトー『大胯びらき』〔ほか〕
著者等紹介
澁澤龍彦[シブサワタツヒコ]
1928‐87年。東京生まれ。本名龍雄。東大仏文科卒業後、マルキ・ド・サドの著作を日本に紹介するかたわら、人間精神や文明の暗黒面に光をあてる多彩なエッセイを発表。晩年は小説に独自の世界を拓いて、広く読まれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マウリツィウス
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【澁澤龍彦「西欧作家論」集成】マニエリスム系譜ではなくグスタフ・マイリンク以降の系譜を継いだ芸術論集成の一つ。澁澤源流とされる形式自体は誤りではないがグノーシス主義を内包した《ロマン主義》とは様相を異にする。シェイクスピア以降の正統派古典を最大限参照した唯美主義を否定する《ドイツ=ロマン派》をカフカ以上に一掃した流れを汲み、古典主義的構築網は逆転することを第一義とした澁澤龍彦でもある。ルーツ刷新を重んじた役割を完全否定するボルヘス正統論が澁澤を「最高の古典」として登録する完遂の歴史を紡ぎ出す残影の証明論。2013/07/23