内容説明
記者クラブに席を置くことの誘惑と腐敗、社をあげて破る「不偏不党」の原則、記者たちを苦しめる「特ダネゲーム」と夕刊の存在…。「知る権利」のエージェントであるマスメディアの自壊は、民主主義の危機を生んだ。朝日新聞社で十七年間にわたり記者を務めた著者が、「職場」として経験したマスメディアの病巣を指摘した問題作。
目次
ぼくはなぜこの仕事を選んだのか
みじめでまぬけな新米記者
パワハラ支局長
不偏不党なんてとっくに死んでいる
記者クラブには不思議がいっぱい
夕刊は不要どころか有害
朝日の人材開発は不毛の荒野だった
ぼくが初めてハイヤーに乗った日
捏造記事はこんなふうに作られる
上祐へのインタビュー原稿がオウムに渡っていた
「前例がない」の一言でボツ
かつて愛した恋人、アエラ
さようなら。お世話になりました。
著者等紹介
烏賀陽弘道[ウガヤヒロミチ]
1963年生まれ。フリージャーナリスト。京都大学経済学部卒業後、朝日新聞社に入社。名古屋本社社会部、「AERA」編集部などを経て2003年退社(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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糜竺(びじく)
21
朝日新聞社内のリアルがよく分かる。他の企業や組織でも、こういったことは十分にありうるかなと思った。2021/08/09
千住林太郎
6
タイトルから想像されるような朝日新聞の論調を批判する本ではない。朝日新聞記者として働いてきた著者が朝日新聞の金銭的な腐敗と人材をスポイルする社風を自身の体験を基に淡々と描いた本である。 取材対象からお土産をもらう記者たちや社用車の私的利用の腐敗もさることながら、適性や能力を考慮せず前例を踏襲する人事制度やモチベーションを失わせる社風など、大企業特有の問題を朝日新聞が抱えていたりすることに改めて驚く。 朝日新聞の衰退は必然だったのかもしれないと思わせる本である。2022/08/23
うえ
6
「入社してみると、期待は無惨にうち砕かれる…ぼくを愕然とさせたのは、もっと醜悪で、もっと矮小な、不正と腐敗なのだ。社外から見る朝日新聞社と車内から見る朝日新聞社は壮絶に食い違っている」●存在しない店の看板を自分で作り、写真に撮って捏造報道した記者「ここまで手の込んだ捏造をやった人は朝日の、いやいや日本の報道の歴史の中でも稀なのではないか。悪い冗談のようだ。ぼくも最初は信じなかった…さらに悪趣味な冗談にしか思えないのだが、この記者、クビどころか社内処分もされず秘密裏に異動し、そのあと現場取材に復帰している」2017/04/02
k2jp
4
元朝日記者「入社したら世間に知られる理想と現実のギャップに苦しんだ」という体験をエッセイ風にまとめた本。記者クラブによる報道の仕組みは官僚の秘密主義が前提となっており、それ故に市民による情報公開請求は別ルートでの秘密入手となり、メディアの既得権益にとって脅威となる…といった鋭い指摘もあるが、書かれた批判の多くは公務員や大企業の組織が抱える問題と共通してるように思う。夕刊不要論や、音楽業界のCD販売ビジネスモデルと新聞業界の再販価格維持制度の類似点といった視点も興味深い2014/05/08
fukutsu
3
これは様々な大企業についても言えることかも知れませんが 社員が過剰に自分を守るようになると腐敗するのかも知れません 必要があるとは思えない仕事を増やし、地位、権力などを守り始めます もちろんこれは著者も指摘している通り簡単に責められることではありません 読みながら私の周りでも見た気がする光景ですし日本で多い光景なのではないでしょうか 読み物としても著者の苦悩が伝わってきて非常に面白いものでした2018/03/25