内容説明
敗者や弱者に同情する庶民の感情を表わす「判官びいき」は、源義経の判官説話のほとんどがその源流となっている本書の原典から来ている。そこでは、連戦連勝する武人としての義経ではなく、波瀾万丈で破天荒な逃亡劇、悲劇的英雄の壮大な流離譚として描かれる。武蔵坊弁慶や佐藤忠信の活躍をはじめ、有名な場面も各所で楽しめる冒険物語の古典。
目次
源義朝の都おち
常盤の都おち
牛若の鞍馬いり
正門坊
牛若の貴船まいり
吉次の奥州ものがたり
遮那王が鞍馬を出る
鏡の宿の強盗
遮那王の元服
阿野禅師との対面〔ほか〕
著者等紹介
高木卓[タカギタク]
1907‐74年。小説家、ドイツ文学者。東京都生まれ。東京大学独文科卒業。戦前に、歴史小説『歌と門の盾』で芥川賞に決定したが、辞退する。そのほかに『遣唐船』『長岡京』などの小説作品があり、『源氏物語』の翻訳も手がけた。東大名誉教授、独協大学教授の独文学者としては著書『ヴァーグナー』や訳書がある
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
❁Lei❁
17
義経の出生から奥州への逃避行までを描いた軍記物語。従者に対する義経の底なしの愛情が、一行に揺るぎない絆をもたらしています。よく言えば天真爛漫、悪く言えばわがままな義経には敵も多いけれど、私はメロメロになってしまいました。都落ちの道中に挟まれるユーモアには、笑いたいやら泣きたいやら。笑いあり涙ありの旅の最後には、壮絶に、華々しく散っていった武士たち。その篤い忠義には目頭が熱くなります。法華経を写したあとで、潔く腹をかき切った義経はかっこいい。ところで、義経の平家追討は省略されているので、『平家物語』へ。2024/03/09
fseigojp
11
徹頭徹尾義経の立場にたった本で、東北・北海道ではとても人気があるという2022/12/30
記憶喪失した男
10
源平合戦で有名な義経の伝記である。合戦の場面は「平家物語」にゆずったのか、この「義経記」には数ページしかない。源平合戦に勝った義経は、賢い女として有名な静御前を始めとする十一人の女をもったという。義経の幼名は牛若、弁慶の幼名は鬼若である。何度も十数人で百人の敵を倒していく豪傑仲間の逃亡劇である。それほど面白いものではないが、まあ、弁慶の最後を書き伝えるものかなと思う。2019/10/25
紫暗
4
タイトルにあるとおり読みやすく現代語訳されているので、古文は苦手という人でも簡単に読み終えることができると思います。ただし、訳者の判断で地名の羅列がくどいとか本筋とは関係ない話がつまらないというような部分が一部カットされているので、とにかく全文を読みたいという人にはお勧めできません。個人的にはかなり面白く読むことができたので、古典を研究するというよりは楽しみたいという人にとってはかなりの良書といえると思います。2011/11/04
ゆーき
3
「名探偵コナン 迷宮の十字路」を観てからずっと興味のあった本。映画館に観に行ったのが中学生の頃なので、10年程の時を経てようやく読めました。義経と家来達の信頼関係が素晴らしいですね。義に厚く情のある人物が多いです。衣川の合戦はやるせない気持ちなりました。家来が一人ずつ減っていく様子は読んでいて辛い。「これがさいごですから、もういちど、わが君にお目にかかりたいと思ってまいりました」←ここの弁慶で泣きそうになりました。あと、一ノ谷の合戦・屋島の合戦・壇ノ浦の合戦といった平家との戦いはかなりあっさりでした。2016/12/31