内容説明
ひと筆の軌跡もない紙の上に、鋭利な穂先に含ませた墨を測りながら、長短の線を自在に使って描いた面相画。濃墨をもって揮灑する溌墨と靄然の淡墨とのあわいをたゆたう素描。おびただしい光のなかに拡散してゆきそうな滲淡の水墨による微茫画。―作家・画家・チェリストと三つの顔をもつアルチザン・ヤマグチの手練の職人芸による画業の一端を展観する。鬼才画家のエロス絵200点。
目次
La Chevelure(髪)
アルカディア
クラナッハ
水彩画
枕絵
レアリテ
影響
性の思想
素描
面相筆
画一主義
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猫丸
9
陽の当たらない二階の座敷。古びた箪笥のある一段は二重底になっていて、そこを開くと数代を経てなお鮮烈なる春画が見つかる。名家の坊っちゃんの経験として理想的である。山口椿氏も本書で似た思い出を語っている。こういうのっていいな。家庭には陰翳がほしいんだ。僕の書斎にはこんな本だってあるのだから、子供たちには勝手に侵入して本を漁ってもらって構わないのだが、どうも遠慮して入らない(入ろうにも足の踏み場がないのかもしれぬ)。あまりに素直すぎる。このままでは良識的な大人になってしまう。少し危機感を抱いている。2023/09/13
桜井青洲
1
作家、チェリストでもある山口椿の画集。たくさんある画のあいだあいだに収録される自伝的エッセイがまた幼少期に感じた背徳感のような後ろめたさが漂う。解説にもあったように健全かつ良識のある家の書斎に仕舞い込まれ、多感な時期の子供が出会って欲しい一冊。2016/05/18